住友生命保険相互会社様 採用選考・入社手続きの業務量を4割以上削減 住友生命が業務改革戦略の先に見据える未来
住友生命保険(以下、住友生命)は業務改革の一環として、営業職の採用選考・入社手続きと全職員の労務管理業務をデジタル化した。この仕組みとして採用したのが、統合型人事システム「LaKeel HR」である。これにより、ペーパーレス化が進み、紙による煩雑な事務作業は大幅に効率化された。だが、それは1つの通過点にすぎない。同社の本当の狙いはその先にある。事務業務のデジタル化によって、どのような価値創出を目指しているのか。住友生命の業務改革戦略に迫ってみたい。
多様なニーズに対応し「よりよく生きる」に貢献する
1907年に創立され、100年以上の歴史を誇る住友生命。パーパスである「社会公共の福祉に貢献する」には、生命保険事業を通じて顧客とその家族の人生を支え、よりよい社会づくりに貢献するという強い思いが込められている。
超高齢社会が到来し、医療や介護の保障、老後の生活への備えなど生命保険に対するニーズは多様化している。「社会やお客さまの価値観が大きく変わる中、一人ひとりに寄り添い、『よりよく生きる』に貢献することが私たちの使命です」と同社 執行役常務の橋本 篤史氏は語る。中期経営計画の中でも、2030年のありたい姿を「ウェルビーイングに貢献する『なくてはならない保険会社グループ』」と定めた。
支社・支部の採用選考、労務管理事務はすべてアナログ
同社は国内に92支社、1531の支部を展開。比例給職種だけで約3万人、事務・管理職を含めた全職員は約4万3000人にのぼる。顧客のウェルビーイングに貢献するには、こうした職員一人ひとりが顧客に寄り添う時間をいかに創出するかが重要となる。
しかし、その実現は容易ではない。事務作業量が膨大だからだ。オフィスでは各種申請の事務作業が山のように発生する。これらの事務処理は大半が紙帳票。事務負荷が高い上、処理も煩雑で、多くの手間と時間がかかっていた。
そこには住友生命特有の雇用形態も大きく影響している。総合キャリア職などの固定給職種と各支社・支部に所属する比例給職種は、各種制度やその手続き、報酬体系もまったく異なる。そのため本社には比例給職種を管理する「営業人事部」と、固定給職種を管理する「人事部」がある。営業人事部は紙帳票による事務が主である一方、人事部の事務はワークフロー化されており、2つの事務が併存していた。
さらに各支社・支部では、比例給職種と固定給職種が在籍しており、営業人事部と人事部の事務をいずれも担っている。「特に比例給職種は支社・支部で通年採用しており、採用選考に伴う担当者の負担は非常に大きいものでした」と同社の幸田 篤宜氏は話す。
具体的には、まず採用候補者(応募者)に履歴書を提出してもらい、1次選考を通れば、後日テストを実施し、最終選考で面接を行うという流れだ。「正式採用までに数回は来社してもらうことになります。履歴書もテストも入社手続きもすべて紙で行っていたからです」と営業管理室長の頼末 洋平氏は説明する。
比例給職種の年間の採用数は約5000人。採用候補者(応募者)数はそれよりはるかに多い。その上、選考に関する書類は支社・支部と本社間で社内便を通してやりとりが必要になる。「膨大な紙の書類を整理・管理するのは膨大な作業を伴います。何度も来社してもらい、紙の書類を書いてもらう採用候補者(応募者)への負担も大きい。これを何とかしたいと考えていました」と橋本氏は振り返る。
各種の申請や手続きを行う労務管理も、比例給職種は紙帳票ベースのやり取りである一方、固定給職種は先行してデジタル化されていた。デジタルと紙という“歪な二刀流”を見直すとともに、本社と支社・支部で異なっている労務管理事務をデジタルに一本化することも急務だったという。
マイクロサービス技術による高い柔軟性・拡張性を評価
そこで同社では、比例給職種の採用選考、全職員の労務管理事務をデジタル化することを決断。労務管理事務を比例給職種・固定給職種といった職種を問わずに共通化・効率化することにした。しかし、既存の基幹システムは、いわゆるレガシーシステム。ここに手を加えるのは手間もコストもかかり、リスクも大きい。「入力情報が既存の基幹システムにうまく連動できる仕組みを考えていました。情報の授受や整合性の確保も含め、シームレスに連携できることが必須でした」と橋本氏は述べる。
要件を満たす製品として、最終的に選定したのが、ラキールの統合型人事システム「LaKeel HR」である。決め手になったのは、柔軟性・拡張性の高いマイクロサービス技術を採用している点だ。「部品単位で機能の追加や入れ替えができるため、 通常のパッケージ製品では対応が難しいワークフローも容易に実現できます」と幸田氏は評価する。
ビジネス環境の変化や人事制度の改正に合わせて、素早いアドオンやカスタマイズも可能だ。提供機能が豊富で、組織や人材に関するデータも集約管理できる。他社製システムとのAPI連携にも幅広く対応する。「インタフェースの設計や外部システムとのデータ連携において自在性と柔軟性が高い。コストも含めて総合的に判断した結果、導入を決めました」と幸田氏は続ける。申請・承認プロセスの処理にはワークフローエンジン「LaKeel Workflow」、業務プロセス・タスク管理には「LaKeel Process Manager」を組み合わせ、ユーザーインタフェースを最適化した。
会社や業界の特性を踏まえ、最適な仕組みを提案
開発は2021年12月からスタートし、まず比例給職種の採用候補者(応募者)の採用選考と入社手続きのデジタル化を行った。次に全職員向けの労務管理事務の各種申請・承認処理を開発。これを機に、デジタル化を先行していた固定給職種の労務管理事務のインタフェースも見直し、LaKeel HRに一本化してワークフローを共通化した。
2022年4月からは身上異動申請、通勤・経路申請、退職手続き、有期雇用契約の契約更新、給与明細や賞与・臨給明細の電子参照、休職手続きなどの機能を順次リリースした。「これにより、会社貸与端末だけでなく、個人所有のスマートフォンでも、採用候補者(応募者)の採用選考と入社手続き、労務管理事務の各種申請・承認を行えるようになりました」と頼末氏はメリットを述べる。
使いやすさ、分かりやすさには特にこだわった。職員の世代は幅広く、ITリテラシーも様々だからだ。採用候補者(応募者)がエントリーする際はアクセスするシステムがファースト接点になるため、いい印象を持ってもらいたいという想いもある。「当社の事務ルールと文化、業界の特性を理解し、こちらの要望を汲んで柔軟に対応してくれました。これによって信頼感が高まり、一致団結してプロジェクトを進められました」と橋本氏は振り返る。
独自性の高い機能実装はLaKeel DXを使い有償でアドオン開発し、LaKeel HRの標準機能とのすみ分けを丁寧に進めていった。その理由について幸田氏は次のように語る。「当社の要望に100%応えていった結果、他社には採用されない製品となり、パッケージとしての進化が止まるという事態は困るからです。パッケージ製品としての魅力や将来性を考え、標準機能として実装すべきか検討してほしかった。結果として、多くの部分でパッケージ製品のレベルアップとして開発してくれたため、コスト、品質、スケジュールともベストなシステムを実現できました」
採用選考の業務量を4割削減しウェルビーイングが向上
LaKeel HRの導入より、アナログだった業務フローのデジタル化は大きく進んだ。まず採用選考では採用候補者(応募者)が自身のPCやスマートフォンを使って、必要な情報を入力するスタイルになった。「紙書類の情報を担当者が一つひとつ事実確認するという手間もなくなりました」と頼末氏は話す。
入社前の学力テストもオンラインで行い、面接結果や採用通知も採用候補者(応募者)のPCやスマートフォンに届く。入社手続きもオンラインで行える。その後は労務事務管理システムの画面上で、手続き状況の確認や承認処理を実施。承認案件は、労務事務管理システムから基幹システムにデータ連動して反映される仕組みだ。支社・支部と本社間の紙書類のやりとりは激減した(図1)。「紙がなくなり、作業も劇的に効率化されたため、採用選考・入社手続きの業務量は4割以上も削減できました」と橋本氏は語る。これにより業務負担が減り、それ以外の業務に余力を作りだすことができるようになったという。
図1 採用選考のデジタル化概要
履歴書の提出、テスト、面接結果や採用結果通知をデジタル化し、情報はシステムで一元管理する。入社希望者は自宅にいながら、PCやスマートフォンで手続きでき、来社は面接など必要最低限で済む。これにより、採用選考・入社手続きの業務量は4割以上も削減した
採用候補者(応募者)にとってのメリットも大きい。採用候補者(応募者)は自分のデバイスから、どこにいても手続きや確認を行える。「何度も来社して、多くの紙の書類を書いてもらう必要もありません。応募から面接に至るまでの所要時間も短くなっています」(橋本氏)。
採用候補者(応募者)の情報をデジタルで管理することで、副次的な効果も得られた。例えば、最終選考をパスしても採用候補者(応募者)の都合などですぐには採用に至らないこともある。以前は支部長や支社長などが人事異動すると、うまく情報が引き継がれず、採用機会を逸してしまうこともあった。「今は情報を貯めておくことで、確実に情報が引き継がれ、採用機会を逸することがなくなりました」と橋本氏は続ける。情報共有が進んだことで、作業が属人化せず、選考もより客観的に行えるという。
固定給職種と比例給職種で分かれていた労務事務の入力インタフェースや事務手順も共通化できた。これまで紙だった比例給職種の労務管理も、固定給職種と同じシステム環境で利用できる。支社や支部における労務管理事務の負担も大幅に削減されたという(図2)。
図2 労務事務管理のシステムイメージ
各種申請の要求はLaKeel Workflowで受け付け、LaKeel HRで処理する。申請情報は連携する基幹システムで一元管理する。給与明細などの帳票も電子化されたため、PCで閲覧またはダウンロードが可能だ。また、一連の流れをLaKeel Process Managerで管理することで複数の担当者にまたがる手続きを可視化し、タスク遅延や属人化を防止できる。人事異動などで担当者が変更になる場合も業務プロセスが可視化されているので引継ぎがスムーズだ
例えば病気や怪我で休職する際は、医師の診断書を写真で添えてオンラインで申請できる。「事務処理のためにわざわざ出社しなくて済むと職員には非常に好評です」と頼末氏は語る。
労務事務の入力インタフェースや事務手順も共通化により、業務量の削減や事務作業の効率化を実現したが、前述したようにこれがゴールではない。より働きやすい環境を実現したことで、職員のウェルビーイング向上につながり、従業員満足度の向上が期待できる。「煩雑な業務が軽減されることで、お客さまや採用候補者(応募者)と向き合う時間を創出し、これまで以上に寄り添った対応が可能になる。それがお客さまのウェルビーイングにつながっていく。これこそが一番の効果です」と橋本氏は強調する。
今後は比例給職種の教育・トレーニングにAIやデジタルを活用していく。一人ひとりに最適化された学びのポイントを提示する仕組みを今年度内に提供する予定だ。「対面営業のスキルを向上させ、お客さまの安心につなげたい」と橋本氏は前を向く。
LaKeel HRの導入によりアナログな業務フローのデジタル化を実現した住友生命。今後もデジタル技術を積極的に活用し、単なる効率化にとどまらない業務改革を推進し、すべてのステークホルダーのウェルビーイング向上に貢献していく考えだ。
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