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HRBPとは?役割、求められる背景、人事との違い等を解説

近年、企業の人事施策を人事部門が単独で進めていく従来の方法ではなく、各部門と連携して経営戦略や事業戦略に紐付く人事戦略を立て、実行する「戦略人事」の必要性が高まっています。そこで注目されているのがHRBP(HRビジネスパートナー)です。
今回は、HRBPの定義から役割、導入方法やステップ、導入のポイントや導入事例までご紹介します。



目次[非表示]

  1. 1.戦略人事におけるHRBPとは?役割を解説
    1. 1.1.戦略人事とHRBPの概念
    2. 1.2.HRBP(HRビジネスパートナー)とは?
    3. 1.3.HRBPの業務
    4. 1.4.HRBPと従来の人事やCHROとの違い
  2. 2.HRBPが求められる背景
    1. 2.1.人材獲得競争の激化 
    2. 2.2.社会環境の変化 
    3. 2.3.経営・事業戦略の高度化 
    4. 2.4.人事オペレーションの標準化・効率化 
  3. 3.HRBPに求められるスキル
    1. 3.1.1. 経営者視点
    2. 3.2.2. コミュニケーション能力
    3. 3.3.3. 課題解決能力
  4. 4.HRBPの導入方法・ステップ
    1. 4.1.①人事戦略を決定する(HRBP導入目的の明確化)
    2. 4.2.②HRBPの責任と役割の設定
    3. 4.3.③実行体制の検討(HRBPの体制作り)
    4. 4.4.④HRBPテスト導入
    5. 4.5.⑤テスト導入の評価と本格運用に向けた準備
  5. 5.HRBPを導入する際のポイント
    1. 5.1.事業部署との連携と信頼関係の構築
    2. 5.2.最適人材のアサインと教育
    3. 5.3.CoEとの連携
  6. 6.HRBPの導入事例
    1. 6.1.スモールビジネスの組織編成をクイックかつ柔軟に実現
    2. 6.2.人と組織を成長させる役割を担う
    3. 6.3.現場に寄り添い、事業部と人事をつなぐ役割を担う
  7. 7.まとめ

戦略人事におけるHRBPとは?役割を解説


まずは戦略人事におけるHRBPの定義や役割などを確認していきましょう。


戦略人事とHRBPの概念

HRBPは、ミシガン大学のビジネススクールの教授であるデイブ・ウルリッチによって提唱されました。彼はHR(人事)の役割を企業の戦略的パートナーとして再定義することに大きな貢献をしています。


ウルリッチの主な貢献の一つは、HRの役割を4つの主要な機能に分けた「HRビジネスパートナーモデル」です。このモデルは、HRが単なる管理業務から脱却し、企業の戦略的目標達成に貢献するための枠組みを提供します。以下がその4つの役割です。


役割①:戦略パートナー
人事のプロフェッショナルとして、経営者が打ち出す企業戦略に沿う形で人事戦略の立案・遂行を担います。
 
役割②:管理エキスパート
人事・労務関連の管理業務を担います。特にリーガルリスクの低減と業務効率化を目的とした労務管理、人事管理、採用活動などのプロセスを取り扱います。
 
役割③:従業員チャンピオン
従業員代表として経営陣との間に立ち、従業員にとって働きやすい職場環境の形成を目指して組織設計を担います。
 
役割④:変革エージェント
人事領域から組織変革を促進する役割で、従業員のモチベーションアップから人材スカウト、経営者の意見の代弁などを含みます。


HRBP(HRビジネスパートナー)とは?

上記4つの役割の内、戦略パートナーとしての役割を担うのがHRBPです。
HRBPは「Human Resource Business Partner」の略称で、経営者・事業責任者の戦略的パートナーとして、人事部門の枠を越えて俯瞰的な視点から、経営や事業の成長をサポートする役職です。
経営面のパートナーとして、企業戦略をもとに人事面の問題を解決する役割を担います。

従来の人事業務(採用、評価、労務管理など)に加え、ビジネスの目標達成を支援するために、経営陣や各部門のリーダーと密接に連携することが特徴と言えます。
そのため、HRBPは、データ分析や最新の人事トレンドを活用し、組織の課題解決に貢献することが求められますので、ビジネスの理解と人事の専門知識の両方を兼ね備えたプロフェッショナルであることが重要です。

HRBPの業務

HRBPは人材戦略の実現や人材の退職防止の実現が主な役割となります。
具体的な業務には、採用計画の立案、パフォーマンス管理、社員の育成・研修、組織開発、労務管理、報酬・福利厚生の設計、マネジメントなどが含まれます。また、HRBPは社員のエンゲージメント向上や職場環境の改善にも注力し、企業文化の醸成を図りつつ、法令遵守やリスク管理の観点からも組織運営をサポートします。


HRBPと従来の人事やCHROとの違い

HRBPの機能がある人事部と従来のHRBPがない人事部との大きな違いは、「経営戦略と人事施策の連動」の推進力です。
従来の人事は、労務管理などを主に行うオペレーション業務が主であり、仕組みや制度を整備して、効率的に運用・管理を行います。経営層や事業責任者とは独立している場合が多く、経営戦略とは連動されにくい状態です。
一方でHRBPは事業部門のミッションや業績目標の達成を人的側面から支援することが仕事であるため、経営視点を持ち、戦略人事を能動的に実行していきます。

また、CHROとの違いについては、HRBPは特定のビジネスユニットや部門に焦点を当てるのに対し、CHROは企業全体の人事戦略を担当します。さらに責任範囲においても、HRBPは日常の人事業務と戦略的なビジネスユニットサポートに重点を置きますが、CHROは企業全体の人事政策、文化、リーダーシップ開発など広範な責任を持つといった違いがあります。


HRBPが求められる背景



近年、HRビジネスパートナー(HRBP)の概念は日本企業にも浸透しつつあります。こうした流れを踏まえ、日本企業でHRBPが求められる背景について解説します。


人材獲得競争の激化 

少子高齢化による労働人口の減少やグローバル採用の一般化により、優秀な人材をめぐる争奪戦は激しさを増しています。企業は採用ブランディングだけでなく、入社後の定着や離職防止まで視野に入れた一貫した施策が不可欠です。HRBP は各事業部と連携し、必要とされるスキルや経験を明確化したうえで配置計画を立案し、入社後のキャリア開発やダイバーシティ推進を戦略的に設計する必要があります。さらに、ウェルビーイングを高める制度や従業員エンゲージメント向上施策を実装することで、「選ばれる組織」をつくり上げ、人材獲得競争における優位性を確立することが求められます。


社会環境の変化 

テクノロジーの進化、リモートワークの浸透、働き方改革の推進などにより、人々の価値観や就労観は多様化しました。VUCA と呼ばれる先行き不透明な環境下では、迅速かつ柔軟に組織を適応させる力が企業存続するために求められております。HRBP は経営視点を持ちながら、現場の状況を的確に把握し、組織文化の醸成やリーダー育成を通じて変化へのレジリエンスを高め、ハイブリッドワークに合わせた評価制度やコミュニケーション設計を主導し、多様な働き方でも一体感を保てる組織基盤を整備することが求められます。


経営・事業戦略の高度化 

新規事業の立ち上げや M&A、デジタルシフトの加速によって、事業ごとに求められる人材像や組織構造がかつてなく複雑化しています。従来型の「管理主体の人事」だけでは、事業スピードに合った人材再配置やスキルマッチングが追いつきません。HRBP は、経営層と同じ目線で事業戦略を理解し、組織設計や人材ポートフォリオの策定を協働で進め、戦略実行力を高める役割を担い、事業部門のパートナーとして課題を共有し、施策を迅速に実装することが求められます。


人事オペレーションの標準化・効率化 

採用管理システムや AI 評価ツールなどの普及により、従来の採用・評価・報酬といった定型業務は高度に自動化・アウトソーシング化が進んでいます。その結果、人事部門に求められる価値は「ルール運用」から「戦略的付加価値の創出」へと変わりました。HRBP は、事業部門に寄り添いながら人材戦略を現場で機能させる専門家となり、標準化で浮いた時間を、組織課題の抽出や施策の効果検証、意思決定のスピード向上に充てることで、人事部門全体の生産性をさらに高める役割も求められます。


HRBPに求められるスキル

HRBPには、幅広いスキルが求められますが、経営者視点やコミュニケーション能力、課題解決能力は、その役割を考えた際に必須のスキルといえます。

1. 経営者視点

HRBPには経営者と同等の視野の広さが求められます。従業員の声を的確に吸い上げ、経営者と建設的な議論を行うためには、人材の適性や能力の見極め、育成の知見、業界動向の把握、自社の経営方針やビジョンの理解が必要です。

2. コミュニケーション能力

業績向上のための人事戦略を実現するには、高いコミュニケーション能力が不可欠です。現場との情報共有を円滑に行うため、相手の意見を傾聴し、自分の意見を主張できる柔軟性が求められます。このスキルは従来の人事業務ではなかなか習得しにくいものであり、研修環境の整備が重要です。

3. 課題解決能力

HRBPは、経営目標達成のために各部門の課題を解決する能力が必要です。現状分析から課題を明確化し、最適な解決手法を見つける能力が求められます。専門的な視点と幅広い知識、前例のないアイデアを発案する想像力も必要で、多岐に渡る能力を駆使して課題に取り組む役割です。

【関連記事】HRBP(HRビジネスパートナー)とは?必要なスキルや役割を解説



HRBPの導入方法・ステップ

HRBPの導入方法をステップに分けて解説します。
全体ステップは以下の通りです。

①人事戦略の検討(HRBP導入目的の明確化)
②HRBPの責任と役割の設定
③実行体制の検討(HRBPの体制作り)
④HRBPテスト導入
⑤テスト導入の評価と本格運用に向けた準備

①人事戦略を決定する(HRBP導入目的の明確化)

HRBPの導入が決まったら、導入自体を目的化せず、自社の人事戦略を策定し目的を明確にすることが大切です。まず将来の事業環境と経営戦略を踏まえ、必要な人材・組織を検討し、採用だけでなく育成も含めて計画します。これらの検討事項を2〜3年の人事戦略としてまとめ、経営ビジョン・目標を明確にしたうえで、HRBP導入によるメリットを精査し、導入目的をはっきりさせることが重要です。

②HRBPの責任と役割の設定

HRBPは、事業部長と互いに連携しながら経営や事業に関する戦略構築を行います。このような関係を円滑に機能させるためには、戦略構築において、事業部長とHRBPが担う責任と役割を明確にしておくことが重要です。


③実行体制の検討(HRBPの体制作り)

人事戦略が決定したら、その実行方法を具体的に検討します。 
HRBPを機能させるには、事業部長との連携体制と、実務を支援する仕組みの両方が欠かせません。たとえば、経営層とHRBPが協議する会議体を設けたり、CoE(Center of Excellence/センター・オブ・エクセレンス)を設置したりして、実行体制を整備しておきましょう。

CoEは、組織の中核となる部署や研究拠点を指し、トップレベルの人材やノウハウを持つ組織・グループとして企業内に設置されます。特に人事領域のCoEは、給与体系や能力開発プログラムの構築など、人事制度の開発を行います。

CoEの役割は、全社的な人事制度の開発と定着を行い、HRBPからのフィードバックを基に改善を進めることです。これにより、高度な人事戦略の実現、効率的なリソース利用、イノベーションの促進が可能となります。

【関連記事】CoE(Center Of Excellence)とは?戦略人事との関係も解説!


④HRBPテスト導入

実行のための準備が整ったらテスト導入を行います。体制が整ったら、すぐにHRBPがうまく機能するとは限りません。事業部長はもちろん、従業員からも信頼され受け入れられる状況がなければ、HRBPは機能しません。まずはテスト導入を行い、経営層や従業員との関係を構築していく必要があります。


⑤テスト導入の評価と本格運用に向けた準備

HRBPのテスト導入による効果を定期的に評価、運用上の課題があれば明確にしていきます。課題を改善していくことで、本格的なHRBPの運用に向けて準備を進めていくことができます。



HRBPを導入する際のポイント

HRBPを導入する際には、次のポイントを押さえて進めましょう。


事業部署との連携と信頼関係の構築

HRBPは経営層と現場をつなぐ橋渡し役であるため、事業部署との連携が欠かせません。事業部門の抱える課題を把握することや、人事戦略を事業部門に浸透させることがHRBPには求められるため、経営層や現場の従業員との信頼関係を構築することは必須となります。


最適人材のアサインと教育

HRBPは先述の通り様々なスキルが求められます。人事全般を理解しているのはもちろんのこと、経営視点やコミュニケーションスキルも持ち合わせた最適な人材をアサインしましょう。既存の人事部の中には最適人材がいない企業も多いでしょう。HRBPは事業の理解も必要となるため、現場部門から抜擢することもあります。不足する知識・スキルを教育し、HRBP人材を育てていくことも必要です。


CoEとの連携

HRBPが活躍するにはCoEとの連携も重要になります。CoEとは「Center Of Excellence/センターオブエクセレンス)」の略称で、人事領域では、中核となる人事機能を指します。人事のあらゆる領域の専門家が集まる集団であり、経営戦略をもとに全社的な人事制度を開発し、定着させるのが役割です。現場での問題解決を担うHRBPを支援します。HRBPを導入し成果を出すには、CoEとの連携は欠かせません。



HRBPの導入事例


HRBPを導入し、効果を出している事例をご紹介します。


スモールビジネスの組織編成をクイックかつ柔軟に実現


ある日本のIT企業では、短期的なスモールビジネスの組織編成によりビジネスの立ち上げを行っていますが、最適な人材のアサインや体制づくりは重要です。HRBPを導入することで、社員情報と新規ビジネスの理解が促進され、クイックかつ柔軟に最適な組織編成の実現に成功しています。


人と組織を成長させる役割を担う

ある世界的IT企業の日本法人では、人事部門に人事権はなく、マネージャーにゆだねられています。人事が担うのは従業員の自律的なキャリア形成を支援することです。HRBPは組織や事業の課題を把握し、人事と連携しながら解決策を進めています。

また、事業をうまく回すだけでなく、リーダーシップ開発や後継者育成プランの開発も行い、人と組織を成長させる役割も担っています。


現場に寄り添い、事業部と人事をつなぐ役割を担う

ある日本のIT企業はHRBPチームを設置しています。各事業部の事業部長ごとに担当を決め、人事部と連携を取りながら、事業部側の組織・人材ニーズに対応しています。
現場に寄り添いながら、事業部と人事部をつなぐ役割を担っています。


まとめ

戦略人事が求められる昨今、組織編成や人材面でも経営戦略に基づいて実行していく必要があります。そのための体制づくりが日本企業の中でも進んでおり、HRBP設置はその一つです。HRBPが活躍している事例はすでに多くあります。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
 
戦略人事を推進する際には、システムの観点からも環境構築を行うことが重要です。
 
人事システム「LaKeel HR」は、戦略人事を推し進めるサポート役を担います。
 
LaKeel HRは分析結果から改善施策が実行できる仕組みまでを包括的に管理し、人事部門だけでなく組織長が主体的に人材戦略を実行できることをコンセプトに開発しています。HRBPが現場や経営と信頼関係を構築する上で、データに基づく戦略立案・浸透・効果測定は不可欠となるため、戦略人事を推進する一助となります。
 
LaKeel HRの詳細については、サービス紹介ページや資料等をご覧ください。



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