パフォーマンスマネジメントとは?メリットから手法、事例まで一挙解説
米国発祥の人材マネジメント手法「パフォーマンスマネジメント」は、日本でも取り入れられており、複数企業がすでに成果を出しています。
今回は、パフォーマンスマネジメントの基礎知識から目標管理制度(MBO)との違い、メリットや手法、事例まで解説します。
目次[非表示]
- 1.パフォーマンスマネジメントとは?
- 2.パフォーマンスマネジメントの実施メリット
- 2.1.従業員のエンゲージメント向上
- 2.2.人材流出の防止
- 2.3.従業員の能力・特性の把握
- 2.4.組織全体の生産性向上
- 3.パフォーマンスマネジメントの主な手法と手順
- 4.パフォーマンスマネジメントの実施事例
- 4.1.大手カフェ経営企業
- 4.2.クリエイティブツールなどを提供する企業
- 4.3.デジタル総合広告会社
- 5.まとめ
パフォーマンスマネジメントとは?
パフォーマンスマネジメントとは、従業員の能力とモチベーションを引き出し、目標に対して主体性をもった行動を促すことで仕事のパフォーマンスを高める人材マネジメント手法です。
例えば、上司から部下への個別フィードバックを通じて部下の主体性を引き出し、目標達成を通じてパフォーマンスを高めるなどがあげられます。
パフォーマンスマネジメントのはじまりは、1970年代に米国のコンサルタントであるオーブリー・C・ダニエルズ氏が「メンバーが行動から結果を結び付けるための人材マネジメント手法」として提唱されたことにあるといわれています。
パフォーマンスマネジメントの特徴
パフォーマンスマネジメントは、次のような特徴を持ちます。
・対話
上司が部下と1対1で面談し、対話を通じて目標設定を行います。つまりパフォーマンスマネジメントの要は対話にあります。対話をいかに質の高いものにするかが重要です。
・能力や特性を重視
個々人が持つ能力や特性を重視するのも特徴です。強みを引き出したり、伸ばしたりしてパフォーマンスを高めます。
・頻繁なフィードバック
初回に面談するだけでなく、設定した目標に向かう最中に直面する課題を乗り越えるためには、上司によるフィードバックも欠かせません。通常のマネジメントよりも頻度高く行うのも特徴です。
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度(MBO)の違い
部下の目標を上司や組織が管理する手法と聞いて、目標管理制度(MBO)とどう違うのかと疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。目標管理制度(MBO)とは、組織の目標に向けて従業員が自ら目標を設定し、その目標の達成度合いで評価する制度です。
パフォーマンスマネジメントと似ていますが、複数の違いがあります。
・ゴール(目的)
大きな違いはゴールです。目標管理制度(MBO)はあくまで組織の目標に基づいて行われ、組織の利益向上を目的とするものである一方、パフォーマンスマネジメントは、あくまで目的は各従業員の強みを引き出し、パフォーマンスを最大化して主体的に業務を遂行することです。
・実施する期間
パフォーマンスマネジメントは1週間から1ヶ月といった短期的な期間設定で目標達成を目指すのに対して、目標管理制度(MBO)は半年から一年といった長期的な期間設定で目標達成を目指します。
・過去と未来のパフォーマンスどちらを重視するか
パフォーマンスマネジメントは従業員の未来のパフォーマンスを重視して、そのポテンシャルに期待する傾向があります。一方で、目標管理制度(MBO)は過去の成果や失敗といった過去のパフォーマンスに目を向け、改善していく考え方を取る傾向があります。
パフォーマンスマネジメントの実施メリット
パフォーマンスマネジメントを実施するメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。そこから得られる長期的なメリットについてもみていきましょう。
従業員のエンゲージメント向上
パフォーマンスマネジメントによって熱意やモチベーション、主体性が向上することで、従業員自身の仕事や組織に対する意欲や愛着、愛社精神であるエンゲージメントが上がります。人材を資本ととらえる人的資本経営がトレンドになっている中、それを成功させるために欠かせない要素とされる従業員エンゲージメントの向上が実現されることは、経営的にも大きなメリットを生み出します。
人材流出の防止
パフォーマンスマネジメントは、従業員の特性や強みを積極的に組織側が引き出そうとする手法です。そのため従業員は、やりがいや組織への貢献を実感することができます。そのような充実感を得ることができる組織には長く働きたいと考える従業員が増えるとことで、人材流出の防止につながるでしょう。
従業員の能力・特性の把握
上司と部下との対話をメインに進められるパフォーマンスマネジメントは、上司が部下をより深く知る機会を提供します。通常業務では把握できなかった、従業員の新たな能力や特性、将来に向けた可能性を把握できることでしょう。
組織全体の生産性向上
組織全体にもたらすメリットを考えると、上司と部下の対話回数が増えることによるコミュニケーション活性化や、従業員それぞれの主体性の向上、さらには課題解決やPDCAサイクル実施の促進など、生産性向上につながる要素を多数含んでいます。
パフォーマンスマネジメントの主な手法と手順
パフォーマンスマネジメントの手法は、先述の通り、上司と部下との対話を通じて目標達成にむけた主体性のある行動の促進が中心となります。実際には次の手順で行っていきます。
まず前提として押さえておきたいことがあります。パフォーマンスマネジメントでは主に上司が部下と個別に対話しますが、上司と部下間だけで完結させるのではなく、進捗状況などを管理する立場として、人事担当者も関わることが重要です。
1. 事前準備
事前準備として、社内でパフォーマンスマネジメントを実施する目的を明確にします。その上で実施期間や目標を定めていきます。
さらに、上司の立場となる従業員に対して、研修などを通じてパフォーマンスマネジメントに関わるスキルの習得、向上や意識改革が必要となります。
2. 上司と部下の対話(面談)
上司と部下が業務の合間に特別に時間をとって面談を行い、対話を行います。対話の内容は、大きく2つあります。一つは、部下の特性や能力、強みの確認。二つ目は、部下が自ら行う目標設定のサポートです。
3. 部下のパフォーマンスの観察
部下は、上司との対話で決めた目標を達成するために、普段の業務の中で主体性を意識しながら取り組んでいきます。上司は部下が設定した目標達成に向けて主体性を持った行動を行えているのか、パフォーマンスを逐一観察します。
4. 上司によるフィードバック
部下の目標達成のための行動に対して、頻繁にフィードバックを行います。部下が取った行動に対する具体的な評価を伝え、どうすればさらに成果が改善するのかを客観的な立場からアドバイスします。目標が達成できた際には、最終のフィードバックの実施と次の段階に向けた行動と目標を対話を通じて決めていきます。
パフォーマンスマネジメントの実施事例
パフォーマンスマネジメントはすでに複数の企業が取り組んでいます。ここでは3つの企業の実施事例をご紹介します。
大手カフェ経営企業
ある大手カフェを展開する企業は、カフェに来店するお客さんに上質なサービスを提供するために、パフォーマンスマネジメントを取り入れています。リーダーと従業員の対話を通じて、従業員一人一人の目標と、組織の目標を擦り合わせながら、従業員と組織両方の成長を目指しています。
クリエイティブツールなどを提供する企業
クリエイティブツールなどを提供する企業は、従業員同士が互いに継続的かつ自由にフィードバックすることで、成長し合える体制を整えています。
マネージャーと部下が、3ヶ月に一度、期待やフィードバック、能力開発をテーマに目標設定を行い、報告をし合う機会を設けています。この取り組みを通じて実際にパフォーマンスを上げています。
デジタル総合広告会社
あるデジタル総合広告会社は、目標管理制度(MBO)を廃止し、従業員のパフォーマンスや成長にフォーカスした、従来の手法とは異なるパフォーマンスマネジメント手法を採る人事評価制度を導入しました。これにより、実際に従業員のパフォーマンス向上を実現しています。
さらに、管理職に対してパフォーマンスマネジメント研修を実施することで、会社として最大限に効果を発揮できるようサポートしている点も特徴的です。
まとめ
パフォーマンスマネジメントの基礎知識から導入事例までお伝えしてきました。パフォーマンスマネジメントは従業員エンゲージメントの向上など、人的資本経営の実現に向けて取り組むべき人事施策の一つといえます。今後、更に注目され多くの企業で導入されることで、従業員のパフォーマンスアップの成果を出していくことでしょう。
パフォーマンスマネジメントを実施していく際に、対話履歴や設定した目標の管理など、様々なデータを集約し一元管理できるシステムやツールの導入も有効です。
戦略人事の実行をサポートする統合型人事システムであるLaKeel HRでは、人材データの一元管理はもちろん、タレントマネジメントにおける様々な機能も備わっています。
さらに、1on1などの面談をサポートする機能も充実しています。面談の設定や、結果の入力、過去分の確認、必要に応じた再面談設定など、面談前後のフローをシステム上で管理できるほか、コミュニケーション機能として、上司がチームや部下の人事データの分析結果を見て、メッセージを送る機能も備わっています。
これらの一連の機能はパフォーマンスマネジメントにお役立ていただけます。詳細はサービス紹介ページをご覧ください。