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戦略人事とは?企業事例や人事戦略との違いを解説

コロナ禍により、私たちの働き方は大きく変化しました。それに伴い、人事部のあり方も新しい形へ刷新することが企業に求められています。

ポストコロナの時代において、各企業が競争優位性を確保しようと模索する中、注目を多く集めているのが「戦略人事」という考え方です。しかし戦略人事は、革新的な概念のため、その定義や重要性を適切に理解できず、社内体制や運用方法を整えるまえに組織の意識的な改革が必要になり、実際に導入するまでに至っていない企業もあるのではないでしょうか。自社でどのような戦略人事を実践すべきか見当がつかずに困っている人事担当者も少なくないでしょう。

この記事では、戦略人事の概要や企業事例、人事戦略との違いについて解説します。戦略人事について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

目次[非表示]

  1. 1.戦略人事とは?
  2. 2.戦略人事が注目される背景
  3. 3.人事戦略との違い
    1. 3.1.人事戦略の例
      1. 3.1.1.・採用手法の変更
    2. 3.2.戦略人事の例
  4. 4.戦略人事を行ううえでの具体的な施策とは?
    1. 4.1.①ダイレクトリクルーティング
    2. 4.2.②タレントマネジメント
    3. 4.3.③リスキリング
  5. 5.戦略人事に求められる4機能とは?
    1. 5.1.HRビジネスパートナー(HRBP)
    2. 5.2.組織開発(OD)と人材開発(TD)
    3. 5.3.センター・オブ・エクセレンス(CoE)
    4. 5.4.オペレーション部門(OPs)
  6. 6.戦略人事に関する企業事例5選
    1. 6.1.事例①:日清食品
    2. 6.2.事例②:日立製作所
    3. 6.3.事例③:味の素
    4. 6.4.事例④:オムロン
    5. 6.5.事例⑤:日産自動車
  7. 7.まとめ

戦略人事とは?

戦略人事とは「経営戦略や事業戦略と連動した人事戦略を策定し実行すること」をいいます。

戦略人事の考え方は、1997年にミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ氏が提唱しました。戦略人事が目指すところは、「企業が経営戦略を実現させるために、人事部門がヒトの価値を最大化できるよう戦略的な人事戦略を行うこと」です。

たとえ、企業に優れた経営戦略があっても、それを実行できるヒトがいなければ実現は不可能です。企業を取り巻く事業環境が急速に変化する時代において、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行できることは、企業の強みとなります。


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戦略人事が注目される背景

戦略人事が注目されるようになった背景には、グローバル化やIT技術の発展によってビジネス環境の変化が加速したことが挙げられます。

ビジネス環境の変化が緩やかであった時期には、経営戦略は経営陣が立案するのが一般的で、人事部門が経営戦略の立案に介入することはそれほどありませんでした。

しかし、昨今のようなビジネス環境の変化が激しい時代において、企業の競争優位性を確保し続けるには、変化に対応できる能力や知識、経験を持つ人材の獲得が重要です。そのため、ヒトを中心とした経営戦略が求められるようになりました。

今後も、DX化などによりビジネス環境の変化が激しい状況が続くと予想されます。したがって、人事部門には、引き続き戦略人事が求められるでしょう。

【関連記事】事業に貢献する人事部門の特徴



人事戦略との違い

人事戦略と戦略人事には、どのような違いがあるのでしょうか。両者の大きな違いは、経営戦略に関与しているかどうかです。

人事戦略(従来の人事)は、人事業務やオペレーション上の改善を通じて企業の生産性や業務効率を高めます。目的はあくまでも人事業務の改善にあり、経営戦略に直接的に関与するものではありません。


人事戦略の例

採用手法の変更

・業務効率化を目的としたアウトソーシング など

一方で、戦略人事とは、経営目標を実現するために人事業務を最適化することです。従来の人事業務に加えて、経営戦略や競争優位性の構築に踏み込んだ施策も行います。


戦略人事の例

・企業が成長していくための戦略立案や組織改善

・経営戦略を実現するために必要なIT人材の獲得 など

そのため、戦略人事には人事戦略と比べて、より積極的な経営への参画が求められます。


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戦略人事を行ううえでの具体的な施策とは?

戦略人事には、代表的な施策として以下のものがあります。

・ダイレクトリクルーティング

・タレントマネジメント

・リスキリング

これらの施策を行うことで、経営戦略を実行するための人材採用や、採用後の最適な人材配置を実現しやすくなります。それぞれの施策について解説します。


①ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業が必要とする人材を採用するために、能動的に実行する採用活動です。

企業はハローワークや求人広告を使用せずに、求職者に直接アプローチします。人材を募集し、応募が来るまで待つ採用手法と比較すると、人事担当者が能動的にアプローチを行うため、経営戦略を達成するための人材を採用するという理由で戦略人事と言えます。


②タレントマネジメント

タレントマネジメントとは、社員が持つスキルや経験値、つまり人的資源を把握し、戦略的な人事配置や育成などを行う人材マネジメント手法のことを指します。

タレントマネジメントは1990年代に米国で、優秀な人材の定着を目的として始まり、今では日本でも導入する企業が多くなってきています。

タレントマネジメントを実施する企業では、経営戦略の実現のために最適な人材配置を迅速に行うことができ、社員のパフォーマンス最大化が期待できます。そのため、ビジネス環境の変化に伴って経営戦略に変更があった場合にも、組織を柔軟に組み替えて変化に対応できます。

【関連記事】タレントマネジメントとは?最適な人材配置を実現するためには



③リスキリング

リスキリングとは、経営戦略の実現上、新たに必要となった職種や業務に対応するために行う、人材の再教育や再開発を指します。技術の発展や働き方の多様化が進む近年において、企業の競争優位性を確保し続けるには、今後必要となる知識やスキルが何かを見極める必要があります。

例えば、近年、デジタル分野における人手不足が問題となっていますが、既存社員にリスキリングを実践することで、新たな人材を雇うことなくデジタル人材を確保することができます。

新事業や技術革新といった経営戦略の実現において、人材に必要なスキルを可視化し、現状とのギャップを補うリスキリングが戦略人事の上では不可欠です。

【お役立ち資料】「戦略人事実現に向けた実行力~人材データの集計・分析で終わらせない3つのポイント~」
【関連記事】リスキリングとは?基礎から徹底解説!


戦略人事に求められる4機能とは?

戦略人事の提唱者であるデイビッド・ウルリッチ氏は、戦略人事を実現するには人事部門が以下の機能を持つことが重要であるとしています。

・HRビジネスパートナー

・組織開発と人材開発

・センター・オブ・エクセレンス

・オペレーション部門

それぞれの要素について、詳しく解説します。



HRビジネスパートナー(HRBP)

HRビジネスパートナーとは、人事担当者(Human Resource)が経営者や事業責任者のビジネスパートナー(Business Partner)として、経営戦略を人事面からサポートすることです。経営方針やビジョンを理解したうえで、経営陣や管理職をサポートし、人材戦略の実現を目指すことが求められます。このHRビジネスパートナーは、戦略人事において最も重要な機能です。

HRビジネスパートナーとしての機能を高めるためには、現場社員の実情やニーズを理解したうえで、人事施策を遂行することが大切です。戦略人事とHRBPは似た意味を持つため、日本では同義語として扱われる場合もあります。

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組織開発(OD)と人材開発(TD)

組織開発(Organization Development)と人材開発(Talent Development)とは、経営戦略を実行に移す組織作りや人材育成のことです。この二つは連携が不可欠で、どちらかが欠けては十分な結果に繋がりません。

組織開発(OD)では、企業理念や経営方針をすべての従業員に認識させ、経営戦略を実現できる組織へと導くことが求められます。

人材開発(TD)では、経営戦略の実現のために、研修を通じて従業員の技能や能力を育て、日常業務で活躍し、成果が出せるようサポートすることが求められます。

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センター・オブ・エクセレンス(CoE)

センター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence)とは、専門的な人事領域における企画立案や戦略設計の役割を集中させる機能です。経営戦略を実現するため、人事の専門知識を活かして、施策の検討段階で現場社員のニーズを反映させる役割を担います。

具体的には、採用計画の立案や評価制度の構築、研修プログラムの開発などがあります。


オペレーション部門(OPs)

オペレーション部門(Operations)は、センター・オブ・エクセレンスで策定した人事施策を実行する機能を指します。例えば、採用活動や給与計算、労務管理などです。

こういった一般的な人事業務は、正確性と効率性が求められるうえに、戦略人事の実践と並行して行う必要があります。



戦略人事に関する企業事例5選

戦略人事について理解できても、それをどのように実践するか迷われる方も多いでしょう。以下では、戦略人事の事例を5つ紹介します。


事例①:日清食品

日清食品グループは、2014年から人事責任者のトップにCHRO(Chief Human Resource Officer)という役職を新設し、戦略人事に着手しました。そして、中長期成長戦略として掲げた「戦略を支える人材/組織基盤の変革」をテーマに、革新的な組織の実現を目標としています。

また、次世代のビジネスを担う経営人材育成のため、企業内大学「NISSIN ACADEMY」を設立しました。OJTでは習得が難しい幅広い知識・スキルを体系的に学べる環境を提供し、次世代リーダーの育成を行っています。


事例②:日立製作所

日立製作所では、2010年以降に経営戦略を変革し、「製品・システム事業」「国内中心」から「社会イノベーション事業」「グローバル展開」へと方向転換しました。そして、それに対応するために経営戦略に連動した戦略人事を実践しています。

海外の拠点ごとに行われていた人事制度や人事施策をグローバルで標準化し、グローバル人材基盤を確立しました。の他にも、多様な経営リーダーの選抜・育成や、デジタル人材の確保と育成、グローバルでの企業文化の醸成などの人事施策を行っています。


事例③:味の素

味の素グループは、従業員への人材投資を増やし、能力開発を強化しています。その中で、経営に貢献する人事施策として、従業員一人ひとりの「自律的成長」「働きがいの実感」「多様な人財の共創」に取り組んでいます。

2018年にはグローバル人財育成プログラム「味の素グループアカデミー」を開講し、グローバルな人材育成にも注力しました。また、働き方改革の推進やタレントマネジメントも並行して行われており、次世代のグローバルリーダー候補者育成にも成功しています。


事例④:オムロン

オムロンでは「事業をつうじて社会価値を創出していく原動力は、社員一人ひとり」であるという考えのもと、会社と社員の新たな関係構築を見据えた、戦略人事を実践しています。

企業理念を自ら体現し組織を牽引する、強いリーダーの育成においては、グローバルでの選抜育成プログラムを拡充し、次世代リーダー人財の各層に対してグローバル共通の育成プログラムを実施しています。

それ以外にも、企業理念を従業員に浸透させるために実施しているTOGA(The Omron Global Awards)という取り組みもあります。その一例が、「オムロンハイスクール」です。海外の生産拠点において従業員に高等教育を受ける機会を提供することで、オムロンで働くことのモチベーションを高め、離職率の低下に貢献しています。


事例⑤:日産自動車

日産自動車では、企業の価値創造のために、従業員が学んで成長し続ける企業文化の醸成と人材開発に取り組んでいます。人材育成のマネジメントとして、「人事制度の継続的な改善」「自律的なキャリア形成の支援」「グローバルに展開する技術・技能教育」「将来の経営層やリーダーの育成」などを行っています。

また、戦略人事の中でもリーダー育成や人材配置を戦略的に行う、タレントマネジメントにも注力してきました。グループ全体の人材を最適配置し、パフォーマンスを最大化するためには、リーダーの発掘・育成が重要だと捉え、その専門部署として2011年から「グローバルタレントマネジメント部」を設置し、ビジネスリーダー育成を行っています。


まとめ

戦略人事とは、経営的な視点から人事戦略を実行することをいいます。ビジネス環境の変化が激しい現代において、戦略人事は企業の競争優位性を確保し続けるために重要です。しかし、人事の業務は属人化しやすく、システムの導入により業務の可視化することが望まれます。そこで、これらの経営課題を解決するツールとしてとして有用なのが「LaKeel HR(ラキール・エイチアール)」です。

LaKeel HRは、SaaS型人事統合システムで、戦略人事の実行をサポートします。勤怠管理や給与管理などの基本的な機能だけでなく、採用分析や人事評価分析、異動配置シミュレーションなどのデータ分析なども可能です。「攻めの人事」つまりは『戦略人事の実現』に役立ちます。

LaKeel HRの活用は、自社にとって最適な戦略人事に取り組む近道となるでしょう。「戦略人事に取り組みたい」「業務の属人化を解消したい」とお考えの方は、ぜひLaKeel HRの導入をご検討ください。


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