ブログ記事

パーパス経営とは?メリットや企業事例、実践ポイントを解説

不透明な経済情勢など先行きへの不安を背景に、利潤の追求だけではなく、社会貢献にも価値を見出す企業が増えています。自社の存在意義を明確にし、社会に与える価値を提示していく形の経営スタイルは「パーパス経営」と呼ばれ、次世代の経営モデルとして注目を集めています。

しかし、パーパス経営という言葉を耳にする機会は増えても、パーパス経営の意味を正確に把握し、説明できるほど深く理解している方は決して多くありません。

そこでこの記事では、パーパス経営の基本知識の理解を目的とした、パーパス経営の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、具体的事例を紹介しつつ、実践ポイントについても解説しますので、パーパス経営について詳しく知っておきたい方はぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.パーパス経営とは?
  2. 2.パーパス経営が注目されている背景
    1. 2.1.SDGsへの注目度の高まり
    2. 2.2.ミレニアル世代を中心としたエシカル消費への関心の高まり
    3. 2.3.ESG投資の活発化
  3. 3.パーパス経営のメリット・デメリットとは?
    1. 3.1.メリット
      1. 3.1.1.・ステークホルダーからの共感
      2. 3.1.2.・従業員のモチベーション向上
    2. 3.2.デメリット
  4. 4.パーパスウォッシュを防ぐための現場の共感力とは?
  5. 5.パーパス経営を実践している企業事例
    1. 5.1.事例①:ソニー
    2. 5.2.事例②:トヨタ自動車
    3. 5.3.事例③:ネスレ日本
    4. 5.4.事例④:味の素
    5. 5.5.事例⑤:パタゴニア
  6. 6.パーパス経営の実践ポイントとは?
    1. 6.1.(1)現状分析
    2. 6.2.(2)パーパスの言語化と社内への周知
    3. 6.3.(3)実務への落とし込み
  7. 7.まとめ
  8. 8.思考データの収集と分析を実現する「LaKeel HR」

パーパス経営とは?

パーパス(Purpose)を直訳すると「目的」「存在意義」を意味します。特定の目的を掲げるとともに、その目的を社会に向けて公開し、自社の存在意義を明確にした経営を行うのがパーパス経営です。

これまで多くの企業は、利益の追求を第一の存在意義とした経営を行っており、それがさまざまな社会問題を生み出す要因として問題視されていました。そうした背景もあり近年では、利益の追求を第一目的とせず、社会課題や環境問題の解決の一助となる活動を存在意義として掲げる企業が増えています。

利益至上主義の企業に対しては社会の目が厳しくなる一方、社会課題の解決に取り組む企業は信頼度が増し、消費者や株主など企業のステークホルダーからの支持も集めています。


戦略人事実行のためのお役立ち資料


パーパス経営が注目されている背景

昨今ではSDGsへの関心が高まりつつある中、消費や投資についても環境への配慮が求められています。ここでは、パーパス経営が注目されている背景について解説します。

SDGsへの注目度の高まり

2015年に国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、社会におけるサステナビリティ(持続可能性)の実現が大きなテーマとなりました。SDGsは2030年までに達成すべき17の目標と169の達成基準が示されており、企業はこの流れを受けて、サステナビリティを重視する動きを活発化させています。

そうしたSDGsへの関心が高まりつつある中、社会貢献という観点がクローズアップされ始め、企業に対する評価基準も社会貢献を前提とするパーパス経営に注目が集まっています。


【関連資料】SDGs経営のための「サステナブル人事」実現のヒント


ミレニアル世代を中心としたエシカル消費への関心の高まり

エシカル消費とは「倫理的消費」のことを指し、つまり人や社会・環境に配慮した消費を意味します。具体的には、地産地消やフェアトレード商品、リサイクル製品などの社会・環境に配慮した商品を積極的に選択するといった消費行動です。

このエシカル消費の中心となるのは「ミレニアル世代」です。ミレニアル世代とは、1980年代から1995年に生まれ、2000年代以降に成人する世代を指します。

この世代は社会貢献に対する意識が高いため、エシカル消費にも高い関心を持っています。今後、日本の労働人口においてミレニアル世代が消費活動の中心となっていく中、企業が生き残るためにはエシカル消費を考慮することが重要です。

社会課題の解決に取り組むパーパス経営を実践する企業が提供する商品やサービスを、どのようにしてミレニアル世代から共感を得るのかが、企業にとって今後の課題となるでしょう。


ESG投資の活発化

ESG投資とは、企業が環境および社会への貢献を重視しているかを投資家が判断したうえで、貢献度の高さが認められた企業へ重点的に投資する手法です。

これまでの投資判断は、財務情報のみに依存していました。しかし、ESG投資が活発化してきたことによって投資先が環境や社会、企業統治などの達成度に加え、貢献度を加味した企業にシフトしてきています。

つまり、ESG投資における有力な判断材料として、社会貢献に取り組むパーパス経営を実践する企業は投資家に選ばれやすい傾向にあるといえるでしょう。


パーパス経営のメリット・デメリットとは?

パーパス経営には、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここでは、パーパス経営に取り組む際のメリットやデメリットについて解説します。


メリット

・ステークホルダーからの共感

ステークホルダーとは、消費者や従業員、投資家などを含めた企業活動におけるすべての利害関係者のことです。パーパス経営に取り組むことで社会貢献に寄与する企業は、このステークホルダーからの支持や共感を得やすくなります。

その結果、ブランディングや認知拡大、売上・収益向上といった効果をもたらし、中長期視点で企業成長につながるでしょう。

ただし、パーパス経営に注力しすぎると、利益を出し続けられない可能性があります。ブランディングができても利益を出せなければ会社の存続は難しいため、社会貢献に傾きすぎてもいけません。利潤追求と社会貢献、どちらか一方に偏ることのないようバランスを意識しましょう。


・従業員のモチベーション向上

上述の通りパーパス経営を行うことで、消費者や投資家だけではなく従業員からも共感を得やすい企業のビジョンとなるため、従業員のモチベーション向上につながりやすくなります。

企業の社会的な存在意義を表すパーパスを掲げることにより、従業員にとって働く意義や目的が明確になります。その結果、従業員は自身が担当している業務が、どのように社会貢献につながっているのかを実感しやすくなるのです。

また、パーパスに由来する内発的動機づけによるモチベーション向上は、従業員のロイヤリティや自発性、パフォーマンスの質を高めるため、企業の業績向上や信頼アップにもつながります。


デメリット

パーパス経営を導入しても社内に浸透せず、実際の企業経営・事業活動がパーパスとかけ離れてしまうことがあります。このような状態を「パーパスウォッシュ」と呼びます。パーパスウォッシュに陥ると、パーパスに即した経営を行えていない、いわゆる「形だけの経営」になってしまいます。

仮にステークホルダーからパーパスウォッシュの状態と見なされてしまうと、企業としての信用を失い、イメージダウンにつながる恐れがあります。そのため、掲げたパーパスに即した行動をとれるかが重要となります。


戦略人事実行のためのお役立ち資料


パーパスウォッシュを防ぐための現場の共感力とは?

パーパスウォッシュを防ぐためには、可能な限りビジョンや行動指針を明確にしたうえで、自社が達成できそうなパーパスを掲げることが重要です。

理想が高すぎると、現場の行動が伴わずにパーパスウォッシュに陥りやすくなります。また、パーパスウォッシュを防ぐためには、現場で働く従業員の共感力を高めることも必要不可欠です。

社会問題ないしは企業のビジョンを主体的に捉え、共感する力を身につけることで、現場の従業員一人ひとりが、当事者意識を持ってパーパスに取り組むようになるでしょう。この共感力を高めることが、パーパスウォッシュの防止に効果的なのです。



パーパス経営を実践している企業事例

パーパス経営の実践に成功している企業は多数あります。パーパス経営を導入している代表的な企業を5つ、事例とともに紹介します。

事例①:ソニー

ソニーグループは、2019年に自社の「Sony’s Purpose & Values」において「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をパーパスとして掲げました。

ミッションを見直す目的で全世界にいる社員に意見を求めたところ、日本国内のみならず、海外の社員からも多くの意見が寄せられました。数ある社員の想いを丁寧にまとめあげた結果、現在のパーパス策定につながったのです。

また、ソニーはパーパス達成のための具体的な取り組みとして、「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」を設立し、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている人々への支援を行っています。


事例②:トヨタ自動車

トヨタ自動車では、パーパスを基本理念と呼び、項目の一つ目として「内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす」と策定しています。

具体的な取り組みとして、環境問題に取り組むことを発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」や、自社の社会的存在意義を発信する「トヨタイムズ」を社内のインナーブランディングに活用しています。


事例③:ネスレ日本

ネスレ日本では「ネスレは、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます。」というパーパスを掲げています。

世界最大の食品飲料会社として、食品・飲料の提供にとどまらず、食を通じて人々の健康増進に寄与していく企業であることを示すパーパスです。

また、ネスレ日本では「個人と家族のために」「コミュニティのために」「地球のために」という3つのジャンルにおいて長期的な目標を定め、社会課題の解決にも取り組んでいます。

具体的には、製品の包装材料をリサイクル可能なものへ変更したり、沖縄でのコーヒー豆栽培を目指すプロジェクトに取り組んだりといった活動を行っています。


事例④:味の素

味の素では、2020年より「食と健康の課題解決」を掲げたパーパス経営に取り組んでいます。「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します。」というビジョンを掲げ、さまざまな取り組みを推進しています。

パーパス経営の一環として、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組みである「Ajinomoto Group Shared Value(ASV)」を確立し、経営の基本方針としています。また、ASVの浸透のため、「ASV自分ごと化」と称した従業員エンゲージメントを高めるマネジメントサイクルに取り組み、従業員の自発的なASVの実践を促進しています。


事例⑤:パタゴニア

アメリカ発祥のアウトドアアイテムの販売ブランドであるパタゴニアは、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」とパーパスに掲げ、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に向けて積極的に活動しています。

また、商品の耐久性を重視した商品開発や、より長く使用してもらうための仕組み作りなど、廃棄物の削減に特化した取り組みを推進しています。

ほかにも、売上の1%を環境問題のために寄付したり、環境負荷の低い原料を使用したりするなど社会課題の解決への取り組みを行っています。


戦略人事実行のためのお役立ち資料


パーパス経営の実践ポイントとは?

パーパスを策定し、導入していく過程において注意すべきポイントがあります。ここでは、パーパス経営の導入および実践ポイントについて解説します。

(1)現状分析

まずは、自社の強みと弱み、競合他社との関係性、従業員のモチベーションを客観的な視点から分析します。現状分析の手法としては、3C分析やSWOT分析を用いると把握しやすいです。

また、パーパスを設定する上では、社会情勢など外的要因についても考慮することが重要です。社会が自社に対してどのような社会課題の解決を求めているのか、その課題は自社のビジネスに関連性のあるものなのかを分析し、パーパスに反映する内容の方向性を定めましょう。


【関連資料】人的資本経営時代に必要なデータマネジメントとは


(2)パーパスの言語化と社内への周知

パーパスを社内に周知させるためには、パーパスを言語化し、ビジョンや経営指針に盛り込むことが推奨されます。

自社と社会との接合点がパーパスであることを社員に理解してもらうためには、社会における自社の存在意義を端的に言語化することが大切です。そのため、パーパスを発信する際には、誰にとってもわかりやすい明確な言葉を用いたパーパスステートメントを作成しましょう。

パーパスを策定した後は社内への周知を行い、社会における自社の存在意義を従業員へ浸透させます。従業員各自がパーパスを主体的に捉えることが最も重要であるため、すべての従業員がパーパスを自分事として捉えるような意識づけを目指しましょう。


(3)実務への落とし込み

言語化したパーパスをいきなり現場に反映させることは難しいため、まずは経営計画に具体的なパーパスを盛り込みましょう。その後、ミッション・ビジョン・バリューを段階的にパーパスと連動させ、最終的には現場の業務に違和感なく組み込めるように調整していきましょう。

また、実務への落とし込みをする際は、従業員とのコミュニケーションを通じて意識づけの度合いを調査することが重要です。アンケート形式の調査だけでは、パーパスが十分に定着しているかが判断しづらいです。

そのため、調査時は従業員一人ひとりに対して個別面談を行うとよいでしょう。個別面談で明らかとなった思考データを収集することによって、パーパス定着の効果測定がより正確になります。

パーパスは導入して終わりではなく、導入後における取り組みが重要です。そのため、表面的な取り組みとならないよう、常に従業員との認識共有を図り、効果測定の結果に応じて新たな実務の考案、実行とPDCAを回すことが重要なポイントとなります。


【関連資料】人事部が主導する組織開発のコツは現場の共感力~パーパス経営で実現する自立型組織へ~


まとめ

この記事では、パーパス経営の重要性や実践時のポイントを紹介しました。特にパーパス経営を実務レベルまで浸透させるためには、従業員ごとにコミュニケーションを取り、そこで得た思考情報を可視化し、効果測定をすることが大切です。

しかし、従業員ごとの思考情報を具体的なデータとしてまとめ、管理することは既存のツールでは難しい部分があります。そこで役に立つのが、SaaS型人事統合システム「LaKeel HR(ラキール・エイチアール)」です。


戦略人事実行のためのお役立ち資料


思考データの収集と分析を実現する「LaKeel HR」

LaKeel HRでは、個人面談時に確認したパーパスの浸透度合いや思考情報を簡単に可視化できます。また、入力した思考情報のデータと、すでにある従業員の人事データを組み合わせることも可能となっており、従来のツールでは発見できなかった課題点や解決策の発見に活用可能です。

また、LaKeel HRは勤怠や給与、評価に関する人事データを一元管理することも可能です。これまで複数のツールで管理していた人事データを集約することで、重要なデータを漏らすことなく簡単に確認できるようになります。

ウィジェットの配置も自由にカスタマイズでき、操作性にも優れていますので、人事だけでなく現場も使用しやすいシステムとなっています。これからパーパス経営を進めていきたいと考えている企業は、ぜひLaKeel HRの導入を検討してみてください。


●LaKeel HRのサービス資料は こちらよりダウンロードいただけます。

●大企業向け人事システム「LaKeel HR」

データドリブン×戦略人事で躍進する!

経営の未来を切り拓く
人事データ活用方法とは

【DL資料内容】
・データドリブンとは
・データドリブン人事で期待できること
・データドリブン人事の成功例
・データドリブン人事の導入に必要なこと
・データドリブン人事に役立つツール

ピックアップ記事

まずはお気軽にご相談ください
戦略人事のお悩みにお応えします

お電話でのお問い合わせはこちら
(平日10:00~18:00)