HRMシステムとは?~HCMとの違いや目的
近年の人手不足やグローバル競争の激化などを背景に、人材に価値を置いて管理に取り組む流れが重要視されています。人材管理を効率的に行うためには、人材データを管理するツールやシステムが求められます。その一つにHRMシステムがあります。
今回は、HRMシステムの概要と共に、HRMの4つのモデル、HCMとHRMやPMとの違い、HRMの考え方を取り入れる際の注意点、HRMシステムでできることや導入時に押さえるべきポイントをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.そもそもHRMとは?
- 2.HRMの4つのモデル
- 2.1.●ミシガンモデルHRM
- 2.2.●ハーバードモデルHRM
- 2.3.●高業績HRMのAMO理論
- 2.4.●高業績HRMのPIRK理論
- 3.HCMとの違いとは
- 3.1.●HCMとHRMの違い
- 3.2.●PMとの違い
- 4.HRMの考え方を組織に取り入れる際の注意点
- 4.1.●まずは長期的なビジョンを検討する
- 4.2.●従業員の声も取り入れて設計する
- 5.HRMシステムでできること
- 5.1.●人事・労務管理
- 5.2.●給与計算
- 5.3.●勤怠管理
- 5.4.●採用管理
- 5.5.●人事評価/マネジメント機能
- 5.6.●タレントマネジメント機能
- 6.HRMシステム導入時に押さえるべきポイントとは
- 6.1.●HRMシステムを活かしてどのようにHRMを行うのかを明確にする
- 6.2.●組織単位で利用する想定を持つ
- 6.3.●費用対効果
- 6.4.●運用体制の構築
- 6.5.●セキュリティの強固さの確認
- 7.HRMシステムとしても有用な「LaKeel HR」
- 8.まとめ
そもそもHRMとは?
HRMシステムを理解する前に、まずは前提情報としてHRMについて解説しましょう。
HRMとは「Human Resource Management」の頭文字をとった言葉で、「人的資源管理」や「人材マネジメント」などと訳されます。人材を経営資源としてとらえ、有効活用するための仕組みを体系的に構築し、運用していくことを指します。
ポイントになるのは、経営戦略と連動し、経営視点で人材を管理することにあります。
経営戦略を実現するために必要な人的資源を市場から調達し、社内で必要に応じて育成を実施するなどして人材パフォーマンス向上を目指します。
HRMの4つのモデル
HRMを実務に導入して成果を出すためには、次の4つのモデルが参考になります。それぞれ解説します。
●ミシガンモデルHRM
1980年代にミシガン大学などで行われた研究をベースとしたミシガンモデルHRMは、人的資源管理は経営戦略との整合性を重視して行うことを前提としています。
具体的には、次の4つの機能を活用して、個人と組織の両方のパフォーマンスを高めていきます。目指すところは業績最大化であり、人材を有効活用して経営戦略へとつなげていきます。
1.採用と選抜
2.人材の評価
3.人材の開発
4.報酬
●ハーバードモデルHRM
1980年代にハーバード大学で行われた研究結果をベースとしたハーバードモデルHRMは、従業員の能力や帰属意識(コミットメント)を重視することをポイントに据えています。
次の4つを押さえながら、従業員の能力や帰属意識を高め、コストパフォーマンスを最大化し、組織と個人両方の目標を合致させます。
1.従業員への影響
2.人的資源のフロー
3.報酬システム
4.職務システム
●高業績HRMのAMO理論
高業績HRMとは、高業績企業が採用している採用・評価・育成などのHRMのやり方を用いたモデルです。高業績HRMにはAMO理論とPIRK理論という代表的な2つの理論があります。
AMO理論は、HRMが「1.社員の能力(Ability)、2.モチベーション(Motivation)、3.機会(Opportunity)」の3要素を向上させることで、組織の競争優位を高めることができるとする理論です。
●高業績HRMのPIRK理論
PIRK理論は、企業競争力を高めるためには、従業員のコミットメントが重要であるという考え方のもと、4つの要素を持つモデルです。4つの要素とは、「権限の委譲(Power)、情報の共有(Information)、公平な報酬(Reward)、4.知識(Knowledge)」です。
AMO理論では「能力・モチベーション・機会」を重視していた一方、PIRK理論では「公平感覚とコミットメント」を重視している点に大きな違いがあります。
HCMとの違いとは
HCMとは「Human Capital Management」の略で、「人的資本管理」と訳されます。従業員の持つ能力やスキル、経験を含めて「資本」と捉える概念です。
●HCMとHRMの違い
では、HCMはHRMとどのように違うのでしょうか。HRMで管理する対象は人材資源です。つまり「人」そのものを「資源」として定義しているのに対し、HCMの対象は人そのものではなく、人が持つ「能力や経験」といった特性を資源ではなく、「資本」として定義している点に違いがあります。
企業が持っている資源は、消費するたびにコストがかかりますが、企業が持っている資本(お金)は、使えば使うほど価値が生まれます。
つまりHRMは、資源としての人材に対しコストをかけて活用していこうという考え方です。一方HCMは、人材の能力やスキルは企業が持つ資本(お金)であり、それを投資することで、価値を創出しようという考え方です。
●PMとの違い
HRMが普及する前までは、「PM」の考え方が一般的でした。PMとは「Personal Management」の略で、「人事労務管理」と訳されます。
PMとHRMも、どちらも企業の人材の管理に関する考え方ですが、意味が大きく異なります。
PMは人材を「コスト」や「労働力」としてとらえて管理する一方で、HRMは人材を「資源」としてとらえて管理します。
PMは、企業の利益の最大化を目指してコストや労働力として人材を活用するという考え方であり、そのために従業員を管理・統制する取り組みを行います。しかし従業員は生きる人であり、個々人によって能力や志向もさまざまです。そのため、管理・統制するには利害調整が必要になります。
しかしPMは人材育成という視点がおろそかであることが課題となっていました。各従業員のスキルや経験を活かし、育成していく考え方が希薄であるため、市場競争が激化する昨今、対応がむずかしくなってきたのです。ただコストとして管理するのではなく、市場ニーズにあわせて人材を戦略的に活かしていく必要が出てきました。
HRMでは人的資源管理、つまり人材を組織にとって有益な資源としてとらえ、単なる労働力ではなく個々の従業員のスキルや経験、志向性を重視して戦略的に育成していくことを重視します。
人材管理を経営戦略と結び付けている点も、HRMがPMとは大きく異なる点といえます。
HRMの考え方を組織に取り入れる際の注意点
HRMの考え方を取り入れる際には、次のことに注意するのをおすすめします。
●まずは長期的なビジョンを検討する
HRMを実施する際には、基本的に経営戦略との整合性を重視することがポイントです。HRMの考え方が経営戦略と合致しているかどうかを確認するためにも、長期的な人事・経営戦略のビジョンから検討しはじめるのをおすすめします。
長期的なビジョンを作る理由は、HRMは対象が「人」であることから、今日、明日に変化が起きるものではなく、一朝一夕には結果が出ないためです。目の前の現実を見据え、まずは長期を見据えた計画を立てるのをおすすめします。
●従業員の声も取り入れて設計する
HRMは「人」を対象として管理していくため、短絡的な結果ばかりを求めてはいけません。人間性を重視して丁寧に対応していくことで、長期的には結果へとつなげることができます。先にご紹介したモデルの中には従業員の能力や帰属意識を重視するモデルもありましたが、そのように従業員の考えを確認した上で、双方が納得できる形で推進していくことは、HRMを成功させるうえで重要といえるでしょう。
HRMシステムでできること
HRMシステムとは、前述のHRMを実現するためのシステム指します。HRMシステムには、一般的に次の機能が備わっており、HRMに活用していくことが可能です。
●人事・労務管理
入退社の手続きや年末調整、社会保険や労働保険といった各種手続きなどの人事・労務に必要業務全般をシステム上で行うことができる機能です。
従来の人事・労務の業務効率化につながるため、HRMで特に注力したい人材育成や評価、分析、タレントマネジメントなどに、より注力できるようになるでしょう。
●給与計算
従業員の給与計算や集計などをシステム上で効率的に行えるのが給与計算機能です。給与計算の業務効率化はもちろんのこと、従業員の給与データは人材データ分析の対象として活用することができます。
●勤怠管理
従業員の日々の勤怠や残業、休暇の取得などを管理できる機能です。従業員の勤怠情報全般を可視化することができるので、分析対象にすることが可能です。働き方改革による残業時間の削減のための取り組みも容易にできますし、より効率的な業務や人材配置に活用することもできます。
●採用管理
採用管理とは、人材募集をかけている採用媒体や人材紹介会社などへ提供している求人情報や応募者情報などを一元管理することができる機能です。
例えば採用媒体経由で応募してきた応募者の情報やコミュニケーション履歴、面接の日程などを管理可能です。また面接時の人事側からの評価を残すこともできます。
採用の一連の業務が効率化するほか、採用情報の一元管理により、人材データ分析時に活用することができます。例えば、ハイパフォーマーが採用できているもしくは定着率の良い採用媒体はどれかなどが挙げられます。
●人事評価/マネジメント機能
従業員の評価情報を一元管理する機能です。コンピテンシー評価や360度評価といった現在、主流となっている評価方法を用いることができるシステムもあります。
また、人事評価の結果をもとに従業員を多角的に分析して、人事配置の最適化のためのシミュレーションを行うこともできます。HRMを実践する際に重要になる機能の一つといえるでしょう。
●タレントマネジメント機能
タレントマネジメントとは、従業員が持つ能力・資質・才能を意味する「タレント」情報を重要な経営資源としてとらえ、経営戦略として人事配置や人材開発、採用活動に活用することで、従業員と組織のパフォーマンスの最大化を目指す人材マネジメント手法です。
そのタレントマネジメントを効率的に行うための機能です。従業員の経歴やスキルなどを一元管理し、可視化できます。このデータは適材適所の人材配置や採用したい人材像の明確化に役立ちます。計画的な人材育成や人材発掘につながるでしょう。
HRMシステム導入時に押さえるべきポイントとは
HRMシステムを導入する際には、次のポイントを押さえることで、より一層、HRMシステムを有効活用できると考えられます。
●HRMシステムを活かしてどのようにHRMを行うのかを明確にする
導入の目的と具体的な活用方法を明確にした上で導入するのをおすすめします。HRMシステムは、使い方によってはただの人材・労務管理を行うだけのツールになってしまいます。HRM本来の目的は、人材を経営資源ととらえて戦略的に経営に活かしていくことです。それにはデータ収集と分析が欠かせません。そのためのHRMシステムであり、具体的な活用イメージをしっかりと持ちましょう。
●組織単位で利用する想定を持つ
HRMは経営戦略に紐付く一つの活動であるため、人事部門が単独で使うものではありません。組織単位でマネジメント層も含めた活用を検討しましょう。
●費用対効果
HRMシステムの導入運用には当然、コストが発生します。費用効果は得られるのか、またその展望を明確にしておかなければなりません。効果指標をどう設定するのかなど、マネジメント層も含めた議論が求められます。
●運用体制の構築
HRMシステムに限らず、新しいシステムは、導入後に担当者が使いこなせなければ意味がありません。操作性が問題ないか確認しながらシステム選定を行うのはもちろん、実際に利用する担当者への研修なども含めた運用体制の構築を行いましょう。
●セキュリティの強固さの確認
HRMシステム選定時にセキュリティがどのくらいのレベルなのかよく確認しましょう。HRMシステムは、従業員の個人情報をはじめ、重要な戦略情報が含まれています。情報漏洩のリスクをよく考えて慎重に選定しなければなりません。
HRMシステムとしても有用な「LaKeel HR」
HRMを実施するためには、人材データを効率的に管理する仕組みづくりが重要です。HRMシステムとして採用するシステムは、必要な機能に応じて、さまざまな候補が出てくるでしょう。
検討する際には、ラキールの戦略人事を推進するための人事システム「LaKeel HR」を候補に入れてみてください。
当システムは、人事や労務データ管理などの基本的な人事システム機能だけでなく、スキル分析やピープルアナリティクス等の高度な分析機能を網羅している統合型人事システムです。HRMの人を資源(リソース)として考える切り口でも、HCMの従業員の能力やスキルも資本ととらえる切り口でも、それぞれの要素を掛け合わせて戦略人事を推進することが可能です。
HRM、HCMともに経営戦略に紐づく管理が求められる昨今、戦略人事を推進する視点でつくられているシステムが最適といえます。
まとめ
HRMは、すでに多くの企業が取り入れている手法であり、HRMシステムの導入も進んでいます。経営戦略に基づく人的資源を有効活用するために、「LaKeel HR」は有効なサポートとなります。ぜひご検討ください。
●LaKeel HRのサービス資料は こちらよりダウンロードいただけます。