フレックスタイム制とはどんな制度?メリットとデメリット、導入への注意点を解説
近年、働き方改革の影響から、ワークライフバランスがこれまで以上に重視されるようになりました。それに伴い、多くの企業が多様な働き方を推進する制度を導入しており、そのうちの1つにフレックスタイム制があります。
フレックスタイム制では、従業員が自身の都合に合わせて勤務時間を調節することができます。そのため、従業員からは歓迎される制度といえますが、企業目線ではフレックスタイム制にはメリットとデメリットの両方があり、自社に導入するかどうかの判断は慎重に検討すべきです。
この記事では、フレックスタイム制の仕組みや制度のメリットとデメリット、導入時の注意点を解説します。
目次[非表示]
- 1.フレックスタイム制とは?
- 2.フレックスタイム制の目的
- 2.1.離職率の低下につながる
- 2.2.残業代の削減につながる
- 2.3.人事労務担当の負担軽減
- 3.フレックスタイム制の仕組み
- 3.1.コアタイムとフレキシブルタイム
- 3.2.精算期間
- 3.3.総労働時間
- 3.4.フレックスタイム制が向いている職種
- 4.フレックスタイム制を企業が採用するメリット
- 5.フレックスタイム制を企業が採用するデメリット
- 5.1.緊急時の対応に不備が生じる恐れがある
- 5.2.労務管理の煩雑化
- 6.フレックスタイム制を導入する際の注意点
- 7.まとめ
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制とは、1日あたりの労働時間を固定せず、特定期間内で総労働時間を定め、従業員がその範囲内で任意に各勤務日の労働時間を決められる制度です。
一般的に、労働時間は「必ず労働しなければならない時間帯(コアタイム)」と「選択により労働する時間帯(フレキシブルタイム)」に分かれています。
基本的に、コアタイムの時間帯には必ず労働しなければなりませんが、フレキシブルタイム内であれば、出社や退社のタイミングは自由となります。なお、コアタイムの設定は企業の判断に委ねられており、労働時間のすべてをフレキシブルタイムとすることも可能です。
フレックスタイム制の目的
フレックスタイム制を導入することには、主に次のような3つのメリットがあります。
離職率の低下につながる
フレックスタイム制は、ワークライフバランスの実現による従業員のエンゲージメント向上や離職率低減のために導入されます。
フレックスタイム制が導入されていれば、従業員は労働時間を自身の希望に合わせて調整することが可能です。育児や介護など、家庭の事情で出勤や退勤の時間を調整したい方は、フレックスタイムを利用することで、負担の少ない勤務時間を選択できます。
フレックスタイム制により労働時間を調整できることは、従業員のワークライフバランスを保つことに加え、効率的かつ意欲的な働き方を後押しします。その結果、従業員の企業に対するエンゲージメントは高まり、離職率も低下できるでしょう。
残業代の削減につながる
フレックスタイム制によって労働時間が調整しやすくなることで、残業代の削減にもつながります。特に、繁忙期と閑散期がある業種では、閑散期中の不要な残業を減らし、かつ繁忙期中の残業時間を閑散期に補填できるため、残業時間が減り、結果として残業代が削減できます。
残業や休日出勤が原因で残業代がかさんでいる場合は、フレックスタイム制を導入することで改善できる可能性があるでしょう。
人事労務担当の負担軽減
フレックスタイム制を導入することで、社員はコアタイム外の出退勤を自由に行えるため、日々の早出や早退、遅刻などの件数が減ります。それにより、手当や控除の計算をするための手間を省くことができ、労務管理の負担軽減が期待できます。
フレックスタイム制の仕組み
フレックスタイム制の仕組みを理解するために、制度のポイントについて解説します。
コアタイムとフレキシブルタイム
フレックスタイム制では、労働時間がコアタイムとフレキシブルタイムに分けられています。
コアタイムとは、必ず勤務していなければならない時間帯を指します。コアタイムを設けない日を設定したり、日によってコアタイムの時間帯を変更したりしても問題ありません。対して、フレキシブルタイムはコアタイムの前後数時間にわたり、出社と退社が自由な時間帯を指します。
労働時間のすべてをフレキシブルタイムとする、スーパーフレックスタイム制を導入している企業もあります。この場合、出勤や退勤時間の裁量は労働者に任されることになります。
精算期間
清算期間とは、フレックスタイム制を導入するにあたって、従業員が働くべき時間を定める特定期間(最大3カ月)を言います。従業員は、清算期間の範囲内で労働時間を調整しながら働きます。
フレックスタイム制を導入する際は、清算期間の長さや起算日・終期などを定めておかねばなりません。
なお、フレックスタイム制での残業時間の取り扱いは、清算期間内の労働時間が法定労働時間を超えているかで判断します。そのため、1日の労働時間が法定労働時間を超過しても、残業代がつくとは限りません。
総労働時間
総労働時間とは、フレックスタイム制において、労働契約上で従業員が清算期間内で労働すべきと定められている時間(所定労働時間)です。総労働時間は、清算期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内になるように定める必要があります(特例措置対象事業場は44時間)。
つまり、清算期間が1カ月(20日)で総労働時間が1週間あたり40時間の場合、労働者は1カ月の間で勤務時間が160時間以内になるように勤務時間を調整することになります。
フレックスタイム制が向いている職種
フレックスタイム制が適している職種は、エンジニアやデザイナーといった専門職や研究職が適しているといわれています。
これらの職種は、業務において他者への依存度が低く、個人の裁量で業務を進行・完結しやすいため、個人で業務を進めた方が成果を出しやすいという点が共通しています。
対面での連携やコミュニケーションがあまり必要でない職種は、社員同士の勤務時間がずれても支障が少ないため、フレックスタイム制に適しているといえるでしょう。
フレックスタイム制が向いていない職種
接客業、現場作業員などはフレックスタイム制には適していません。これらの職種では顧客や自社内の関係者との連携やコミュニケーションが必要とされるためです。
他者との連携やコミュニケーションが不可欠な職種でフレックスタイム制を導入すると、現場での業務に支障をきたしかねません。また、特定の時間帯に勤務が必要な仕事も、必要な人員を確保しにくくなるため、フレックスタイムはあまり適していません。
フレックスタイム制を企業が採用するメリット
企業がフレックスタイム制を導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、2つのメリットを確認していきましょう。
人件費の削減
フレックスタイム制を導入することで、効率的な働き方ができるため人件費の削減につながります。
通常の働き方では、1日の所定労働時間が定められているため、業務量が少ない日であっても終業時刻まで退社できません。その結果、社員は時間を有効活用できず、労働時間に無駄が生じることとなります。反対に、業務量が多い日には、それに対応するために残業をしなければなりません。
フレックスタイム制を導入することで、業務量が少ない日は労働時間を短くし、その代わりに業務量が多い日に労働時間を長くするなどの柔軟な調整が可能です。これにより、時間の無駄を最小限に抑えつつ業務効率が向上し、人件費を効果的に抑制できます。
企業イメージの向上
フレックスタイム制による労働時間の柔軟な調整は、企業のイメージ向上に寄与します。この制度は従業員のワークライフバランスを向上させ、効率的で意欲的な働き方を促進することから、働き方改革を推進する企業イメージを対外的にアピールできるでしょう。
採用に関しても同様で、求職者は業務の内容だけでなく勤務形態にも注目しています。フレックスタイム制を導入している企業は、「従業員を大切にし、働きやすい労働環境を提供している企業」という印象を求職者に与えやすいです。その結果、採用活動において優れた人材を獲得しやすくなります。
フレックスタイム制を企業が採用するデメリット
企業がフレックスタイム制を導入することには、どのようなデメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的なものを2つ紹介します。
緊急時の対応に不備が生じる恐れがある
フレックスタイム制を導入すると、担当者が不在で緊急時の対応が遅れる可能性があります。予測できない緊急のトラブルや電話、突発的な会議などへの対応が必要になった場合、担当者がまだ出社していなかったり、既に退社していたりするという状況が発生しかねません。
そのため、フレックスタイム制を採用する際には、社員同士で業務の共有を強化し、緊急時の対応方法を検討・構築するなど、組織として緊急時の対応体制を整えておくことが重要です。
労務管理の煩雑化
フレックスタイム制は、労働時間を固定する方法よりも勤怠管理が煩雑になります。特に、清算期間を2カ月や3カ月としている場合、月をまたいだ労働時間の繰り越しが発生しやすくなり、これがさらなる勤怠管理の煩雑化を招く可能性があります。
勤怠管理が煩雑になると、労働時間の把握や給与計算に誤りが生じやすいです。また、労働時間を正確に把握できていない場合、時間外労働の規定に抵触する可能性もあります。
フレックスタイム制を導入する際には、労働時間を正確に把握し、所定労働時間と残業時間を適切に判定するために、制度に対応できる仕組みづくりが求められます。
フレックスタイム制を導入する際の注意点
フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則の改定と労使協定の締結を失念しないよう注意が必要です。
就業規則の改定
フレックスタイム制を導入する際には、就業規則を変更して、始業時刻と終業時刻の決定を従業員に委ねる旨を明記します。同時に、コアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合においても、就業規則内に規定します。
また、10人以上の従業員を抱える事業所の場合、就業規則は作成時・変更時に労働基準監督署に届出を出さねばなりません。なお、一般的に就業規則の作成や変更には、従業員の過半数の信任を受けた、従業員代表の意見書を添付する必要があります。
労使協定の締結
フレックスタイム制を導入する際には、以下の事項を労使協定で定めます。
・対象となる労働者の範囲
・清算期間
・清算期間の起算日
・清算期間の総労働時間
・標準となる1日の労働時間
・コアタイム(※設定する場合のみ)
・フレキシブルタイム(※設定する場合のみ)
労使協定の内容は使用者が作成し、労働組合もしくは従業員の過半数を代表する者と締結します。労使協定を締結した後、総労働時間の清算期間が1カ月を超える場合は、労働基準監督署への労使協定の届出が必要です。
また、すべての労使協定には周知義務があるため、届出の有無にかかわらず周知が必要になります。周知義務違反は、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
まとめ
フレックスタイム制の導入には、労働基準法で定められた手続きが必要です。この手続きには詳細な規定があるため、慎重に進めなければなりません。そして、実際に制度の運用を開始すると、勤怠管理がこれまで以上に煩雑になる可能性があります。よって、個社ごとの制度に柔軟に対応できる勤怠管理システムの導入が必須になるでしょう。
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