人事考課とは?人事評価との違いや目的と評価基準を解説
人事考課は企業が従業員の仕事の成果やプロセス、能力、仕事に対する姿勢などを総合的に評価する制度で、報酬や昇進、教育研修などの能力開発に影響を与えます。目標設定やフィードバックを通じて、従業員の成長促進や、定期的な評価の実施により、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
今回は、人事考課の意味や目的、人事評価との違い、評価方法、そして人事部門における運用のポイントをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.人事考課とは?
- 1.1.人事考課の目的
- 1.2.人事考課と人事評価の違い
- 1.3.主な評価基準
- 2.人事考課の評価方法
- 2.1.目標管理制度(MBOとOKR)
- 2.2.コンピテンシー評価
- 2.3.360度評価
- 2.4.バリュー評価
- 3.人事考課の運用のポイント
- 3.1.達成可能な目標の設定
- 3.2.評価プロセスの透明性を確保する
- 3.3.面談を通じて結果を伝え、フォローアップする
- 3.4.システムによる評価業務の効率化を進める
- 4.まとめ
人事考課とは?
人事考課とは、企業などの組織が従業員の特定期間の仕事の成果やプロセス、能力、仕事に対する姿勢など総合的に評価、判断する制度です。企業が一定の基準を設け、それらに基づいて総合的に評価します。
評価結果は、昇給や昇進、教育研修などの能力開発に活用されます。また、目標設定やフィードバック面談を通じて、従業員の成長を促進することや、モチベーションの向上、組織の活性化にもつながります。
企業によってその実施時期は異なりますが、一般的に1年に1回、四半期や半期に1回など定期的に実施されます。
人事考課の目的
人事考課の主な目的は、従業員のパフォーマンスを適切に評価し、各個人の能力開発の方針と昇進、昇格、給与、賞与などの処遇を決定することです。従業員の将来のキャリアに大きな影響を与えるため、人事考課においては公正性と公平性の確保が極めて重要です。
企業は人事考課において明確な基準を設けることで、従業員に期待する行動や成果を具体的に示すことができます。例えば、業績達成度、職務遂行能力、チームワーク、イノベーション力などの項目を設定し、各項目に対して明確な評価指標を定めることが有効です。
従業員は、自身の努力や取り組みが公正に評価され、企業の業績とのつながりを認識することで、業務に対するモチベーションを向上させることができます。これにより、人事考課の実施は企業と従業員の相互理解を促進し、組織全体の活性化につながります。
さらに、人事考課を通じて組織内の人的資本を評価し現状を把握することで、効果的な人材開発プログラムの策定や、中長期的な戦略人事施策の立案にも活用することが可能です。このように、適切に実施された人事考課は、個人の成長と組織の発展の両方に貢献する重要な役割を果たします。
人事考課と人事評価の違い
評価制度というと、一般的には人事評価が思い出されますが、人事考課とはどのような点で異なるのでしょうか。結論から言えば、明確には決まっていません。企業によっては人事評価と人事考課は同義のこともありますし、人事考課が人事評価制度の一つとして位置づけられることもあります。
主な評価基準
人事考課の主な評価基準には、業績考課、能力考課、情意考課の3つがあり、これらを組み合わせて、多角的に評価されるのが一般的です。
業績考課は仕事の結果や成果、能力考課は保有能力や潜在能力、発揮能力などが考慮されます。情意考課とは、日頃の業務への姿勢や態度を意味します。具体的には業務に対する責任感や積極性、規律性、協調性などの観点が挙げられます。
人事考課の評価方法
人事考課では、主に次の評価方法が使われています。それぞれの特徴を見ていきましょう。
目標管理制度(MBOとOKR)
MBOとは「Management By Objectives」の略称で、一定期間内における従業員個人の目標を上司と相談した上で設定し、その目標に対する達成度に応じて評価が決まります。上司から一方的に与えられる目標ではなく、従業員が自主的に目標設定に関わる点が特徴です。
一方、OKRは「Objectives and Key Results」の略で、組織全体で共有される大きな目標(Objectives)と、その達成を測る具体的な指標(Key Results)を設定します。OKRは四半期ごとなど短期間で見直しを行い、野心的な目標設定と全社的な共有を重視します。
MBOが個人レベルの目標達成に重点を置くのに対し、OKRは組織全体の方向性と個人やチームの目標を連動させ、より柔軟で迅速な対応を可能にします。両手法とも従業員の主体的な参加を促しますが、組織の特性に応じて適切な方法を選択することが重要です。
コンピテンシー評価
コンピテンシーとは「行動特性」を意味します。自社におけるハイパフォーマーの特性を定義し、それを基準にして評価する手法です。例えばリーダーシップや問題解決力、コミュニケーション力、リスク管理能力などが基準となります。成果だけでなくプロセスや価値観などを評価に含めることができます。
360度評価
対象者の周囲に上司・同僚・部下など複数名の観察者を据え、それぞれの評価を取りまとめて評価する手法です。多角的な視点での評価が可能で、より客観的で評価される当人にとっては納得がいきやすい特徴があります。
バリュー評価
主に情意考課における評価手法です。企業の定める行動指針(バリュー)や行動規範に沿っているかどうかを測ります。特徴的なのは、他の従業員との相対評価である点です。自社との価値観が一致しているかどうかを判断します。
人事考課の運用のポイント
人事考課を運用する際には、次のポイントを押さえることで、スムーズに進められるでしょう。
達成可能な目標の設定
人事考課における目標設定では従業員の等級やスキルに合わせた納得感のある目標設定が重要です。多くの企業では等級ごとに期待される役割や目指すべき成果などが設定されています。面談などを通じて期待する行動や価値観、目指すべき成果などを従業員に対して示し、企業と従業員の双方が納得感のある目標設定を行うことが重要です。
評価プロセスの透明性を確保する
人事考課の全過程を従業員に明確に示し、公平性と信頼性を高めることが重要です。具体的には、評価基準や方法を事前に公開し、評価のタイミングや手順を明確にします。また、自己評価をつけてもらい、特に過大評価となっている部分は評価結果とその根拠を従業員に丁寧にフィードバックし、質問や異議申し立ての機会を設けます。さらに、評価者間での擦り合わせを行い、評価者による甘辛が生まれないことも必要です。これらの取り組みにより、従業員の納得感が高まり、評価制度への信頼が向上します。
面談を通じて結果を伝え、フォローアップする
人事考課の結果は、必ずレビュー面談やフィードバック面談を通じて伝えるべきです。特に、従業員にとって期待を下回る結果については、その理由を丁寧に説明し、納得感を高めることが重要です。同時に、改善が必要な点については、上司と従業員が協力して具体的な改善策を策定します。このプロセスを通じて、従業員の今後の成長につなげることができます。報酬は高くなれば納得感が高まる従業員ばかりとは限りません。役割やポジション、業務量など従業員の価値観に合わせたフォローアップが必要です。
システムによる評価業務の効率化を進める
人事考課の評価業務には、評価の決定、評価内容の集計、評価会議資料の作成など、多くの作業が伴います。また、評価スケジュールの遅延も課題となりがちです。これらの課題に対応するため、人事システムの活用が有効です。例えば、クラウド型の人事評価システムを導入することで、リアルタイムでの進捗管理、自動リマインド機能、評価データの自動集計などが可能になります。また、タレントマネジメントシステムを活用すれば、評価結果と連動した育成計画の策定や、キャリアパスの可視化も実現できます。これらのツールを適切に選択・活用することで、評価業務の効率化と質の向上を同時に達成できます。
まとめ
人事考課は従業員の昇進や給与が決まる重要な制度といえます。実施方法や採用する評価方法は異なりますが、人事考課業務そのものを効率的に進めることで、公正・公平な評価へ集中しやすくなると考えられます。
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