コンピテンシー評価とは?メリット・デメリットや導入の流れを解説
コンピテンシー評価とは、企業内で高い成果を上げる人材に共通する行動特性をもとに、評価基準や評価項目を設定し評価を行う手法です。社員の能力をより正確に把握し、組織全体のパフォーマンス向上を目指すための手段として導入が進んでいます。
今回は、コンピテンシー評価の概要から他の評価制度との違い、コンピテンシー評価のメリットとデメリット、コンピテンシー評価の導入の流れをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.コンピテンシー評価とは?
- 2.コンピテンシー評価のメリット・デメリット
- 2.1.従業員側のメリット
- 2.2.企業側のメリット
- 2.3.従業員側のデメリット
- 2.4.企業側のデメリット
- 3.コンピテンシー評価の導入方法と流れ
- 3.1.チームを編成する
- 3.2.コンピテンシーの検討
- 3.3.ビジョン・経営戦略などとのすり合わせ
- 3.4.コンピテンシーモデルの作成・評価項目の確定
- 3.5.評価シートの作成
- 3.6.テスト・運用
- 3.7.改善
- 4.まとめ
コンピテンシー評価とは?
コンピテンシー評価とは、企業が独自に定義する「コンピテンシー(competency)」に基づき、従業員の行動特性を評価する制度です。
ここでいうコンピテンシーとは、企業内で高い成果を上げている人材に共通する行動特性を指します。学歴や知能、年齢といった属性に関係なく、成果を出している人には共通した行動パターンがあることがわかっており、その傾向を体系化することで評価基準として活用します。
企業は、自社のハイパフォーマーの行動特性や事業戦略をもとにコンピテンシーモデルを作成し、それを基にして評価の枠組みを構築していきます。
一般的には、「コンピテンシー・ディクショナリ」と呼ばれるテンプレートを活用し、6つの領域と20の評価項目に分類された要素を参考にしながら、自社オリジナルのコンピテンシーを設定するケースが多く見られます。
他制度との違い
コンピテンシー評価は他の“行動評価”制度である能力評価やバリュー評価と似ているようで異なる評価手法です。
能力評価とは、職能資格制度とも呼ばれる評価制度で、人材が業務に必要な能力・スキル・知識を備えているかどうかを評価するものです。つまり業務起点の能力や行動(思考)の評価となります。一方、コンピテンシー評価は、業務ではなく成果を生み出す行動特性(コンピテンシー)を起点として、行動や思考を評価する点が異なります。
また、バリュー評価は、企業が掲げる価値観や行動指針(バリュー)を基準に、人材の行動や思考を評価する制度です。成果を出す人材の行動特性を起点とするコンピテンシー評価とは異なります。
注目される理由
コンピテンシー評価が近年多くの企業に注目されている背景には、人材確保と育成が企業の競争力を左右する重要な課題となっていることが挙げられます。少子高齢化や人手不足が深刻化する中、限られた人材の中から高い成果を生み出す人材を効率的に育成する手段として、コンピテンシー評価が有効視されています。
この手法は自社で成果を上げているハイパフォーマーに共通する行動特性(コンピテンシー)を明確化し、それを基準に人材を評価・育成します。そのため、一般的なスキル基準に基づく評価制度と比べて、自社の実態や戦略に即した人材育成が可能になります。
結果として、自社に最適化された人材の育成につながり、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献すると期待されています。
コンピテンシー評価のメリット・デメリット
コンピテンシー評価は、従業員、企業それぞれに次のメリットとデメリットがあります。
従業員側のメリット
従業員にとって、自己理解を促進し、キャリア開発を支援する重要なツールとなります。明確な基準に基づく公平な評価により、従業員は自身の強みと改善点を客観的に把握できるだけでなく、的を絞ったトレーニングや成長の機会を得ることができます。
また、具体的なコンピテンシーに基づいたフィードバックは、より建設的で有意義な対話を可能にし、自身の成長や進歩を可視化することでモチベーションの向上にもつながります。
企業側のメリット
企業側は、ハイパフォーマーの行動特性に基づく評価基準により、人材育成が効率化・スピードアップすることでしょう。また従来の能力評価の項目に見られるような「協調性」「責任感」などの曖昧な評価基準は迷うところも多かった一方、コンピテンシー評価は、具体的な評価項目となるため、評価しやすくなるといえます。
そしてコンピテンシーの作り方によっては、経営戦略と評価基準の統一化を図れるメリットがあります。
従業員側のデメリット
従業員にとって、コンピテンシー評価の細かい評価項目すべてについて高いレベルを要求されるとプレッシャーとなります。より高いパフォーマンスを上げたい人材でなければ、メリットに感じないこともあるでしょう。
企業側のデメリット
企業側にとっては、運用面でいくつかデメリットがあります。例えば、コンピテンシーを作成するのは非常に手間と時間を要する点、事業戦略などの環境変化により評価項目を変更するべきところ、細かく定めすぎることで変更しにくい点が挙げられます。
さらに、自社の経営状況や事業戦略によって運用しながら定期的に改善・見直しが求められる点も運用負荷が高まりやすい理由です。
コンピテンシー評価の導入方法と流れ
コンピテンシー評価の導入方法として、基本的な流れを解説します。
チームを編成する
コンピテンシー評価は、一般的な評価基準ではなく、自社独自の評価基準を作成する必要があり、作成のためのチームを組むことが重要です。メンバーには人事担当者の管理者やマネジメント層だけでなく、ハイパフォーマー自身も含め、直接意見を反映できるようにすることが重要です。
コンピテンシーの検討
チーム内でコンピテンシーを検討します。コンピテンシー・ディクショナリの項目をもとに、ハイパフォーマーへのインタビューを実施した上で行動特性をつかみ、コンピテンシー項目を洗い出します。
ビジョン・経営戦略などとのすり合わせ
企業理念やビジョン、ミッション、現状の経営・事業戦略との整合性を持たせます。
コンピテンシーモデルの作成・評価項目の確定
2で集めた情報をもとにコンピテンシーモデルを作成します。評価項目を選定し、確定させます。選定基準としては、現在の経営・事業戦略において最も成果につながるもの、継続的に人材育成の効果を高められるものがよいとされています。
評価シートの作成
コンピテンシー項目をシートにまとめ、評価者が評価できるようにします。
テスト・運用
実際にテスト運用をしてから、調整しつつ、本稼働させるのが一般的です。
改善
運用しながら、公平でない部分や従業員からの不満の声などが出る可能性もあります。それらの問題を解決しながら、改善を繰り返していきます。
コンピテンシーそのものと評価制度の両方を見直し、改善していくことでより自社にとって最適なコンピテンシー評価を策定できます。
まとめ
人事評価制度におけるコンピテンシー評価の概要とメリット・デメリット、導入の流れを解説しました。従業員の納得感を高め、企業にとって人材育成を効率化できる手法といえます。
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