やりっぱなしで終わらせないパルスサーベイ運用術
パルスサーベイとは従業員の意識調査をリアルタイムで測る手法として注目されています。
コロナ禍で従業員の把握をしていくことに有効ということもあり、導入する企業が増えています。また、HRテクノロジーの進歩により自社内で調査と分析が素早くできるようになったことも背景にあります。この記事ではパルスサーベイの特徴と運用についてご紹介します。
目次[非表示]
- 1.パルスサーベイとは
- 2.パルスサーベイが注目されている理由
- 2.1.リアルタイムで把握、即アクションできる
- 2.2.エンゲージメントを高める
- 2.3.健康状態が把握できる
- 3.パルスサーベイの形骸化を防ぐには
- 4.今後
パルスサーベイとは
パルス(pulse)とは、日本語で「脈拍」のこと。パルスサーベイは、脈拍チェックのように定期的に高頻度で実施する従業員の意識調査です。日次・週次・月次で行い、リアルタイムで従業員を把握することを目的としています。
高頻度で行うため、質問は3~10問程度にし、従業員が負担なく答えられるようにするのが一般的です。
例えるならば、パルスサーベイは毎朝の「検温」で、従来の従業員エンゲージメント調査は年に1回の「人間ドック」です。
パルスサーベイでは具体的には以下のような設問がよく使われています。
- 会社のミッションやビジョンを理解し、共感しているか
- 事業内容や戦略を理解し誇りに思っているか
- 健康状態は良好か
- 上司同僚との関係は良好か
- オフィス環境や待遇について不満はないか
- 承認欲求は満たされているか
- 十分な成長機会があると感じているか
記述式ではなく選択式で短時間で答えられる設問にして、回答率を高くするのが一般的です。
パルスサーベイが注目されている理由
リアルタイムで把握、即アクションできる
パルスサーベイは週に一度、月に一度といった高い頻度で実施するため、結果はすぐに確認できるようになっています。 年次で行うような大規模な調査は設問数が多く、分析結果が出るまでに時間がかかってしまうことも多いですが、パルスサーベイではリアルタイムに結果を把握できます。
特にSNSを日常的に利用している世代は、自分がアクションしたことに対し、すぐにリアクションをしてもらうことが当たり前になっています。いいね!の反応や既読してくれているのかなど、すぐにフィードバック(反応)が欲しいと思っていますので、回答に素早く対応できる環境を作ることは、エンプロイーエクスペリエンス(EX)を高めることに繋がります。
また、従業員の意識や会社環境は日々変化するので、指標の変化に素早く対応できることがメリットです。
エンゲージメントを高める
パルスサーベイの結果は現場組織長にフィードバックされます。調査は個人を特定できないようにしている企業もありますが、従業員が許可すれば個人の回答を見ることができるようにしているケースもあります。
組織長は従業員の回答から、組織や仕事のエンゲージメントを高めるための施策を講じることができます。会社や組織長が問題解決に取り組むことを宣言することで、会社への信頼感が高まります。新しい制度や事業計画が従業員へ公開された際は、自由設問などを設けて、声を聴く姿勢を示すこともできます。
エンゲージメントを高めることは従業員の生産性を向上させ、離職を防ぐことに繋がるだけでなく、エンゲージメントの高さと売上業績には相関性があると言われていますので、近年、多くの企業がエンゲージメント向上に力を入れています。
健康状態が把握できる
コロナ禍でテレワークを導入している企業の多くが、従業員の健康状態が見えなくなったと感じています。これまでオフィスにいれば、顔色が良くない、声に張りがない、ぼんやりしていることが多いなど、目から入る情報から「大丈夫か?」と声をかけるなど早期に対応ができたと思います。これをパルスサーベイを活用し補う企業が増えています。
特に新入社員や異動でチームに相談できる関係性ができていない人は、心も体も不調を伝えにくく、重症化してしまうことが予測されます。そういったリスクを短いスパンで調査を行なうことで軽減させます。
パルスサーベイの形骸化を防ぐには
パルスサーベイや従業員調査を導入したはいいが、現場では「忙しいのに、アンケートばかりやらされてうんざり!」「返されたデータが難しくてどう活用すればいいかわからない」という悩みも生まれています。
データを収集してもやりっぱなしになっている企業が実は多いのではないでしょうか。
前提として、従業員が組織改善に対して取り組んでいくことの重要性や現状分析としてサーベイを活用することに共感していることが必要です。
その上で、サーベイを活用するためには2つのスキルが必要になります。1つ目は、データを組織や従業員の結果として可視化すること。2つ目はデータが示す結果について対話でフィードバック、双方向のコミュニケーションをとることが必要になります。
パルスサーベイはライトな質問でタイムリーに情報が分かるという強みはありますが、どこに問題があるかがわかっても、その原因など詳細は追加のヒアリングをしないとわからないという弱みがあります。
多様化する人材の価値観や物事の捉え方は様々ですので、サーベイの結果からさらに気になる対象者の「個」を把握し対応していくことが必要になります。
例えば、結果データにより、面談をすべき条件を事前に設定しておき、次のアクションの通知が来たり、面談が実施出来ていない組織長に自動でリマインドがされる仕組みなどセットで検討しておくと実行力が高まります。
また、面談記録をシステムで管理し、サーベイの結果と従業員からヒアリングした内容の両方を可視化し、より精度の高い改善施策が立てられるように運用していくことが重要です。
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今後
パルスサーベイの情報は設問数が少ないこともあり、それ単体ではわかることに限度があります。
組織や人材の情報は、サーベイだけでなく、従業員の属性や異動、退職、評価などの情報を合わせて傾向分析ができると、課題の把握と打ち手の精度が上がっていきます。
これをタイムリーに行なうことが、これからのHRテクノロジーでは求められています。データを集めること、溜めることが第一段階ではあるものの、活用がなされないまま長く収集だけを続けると、現場は疲弊してしまうのです。
いち早く、データを活用し、施策が実行できる環境を作ることが運用の鍵となりそうです。