ピープルアナリティクスの分析手法とは?手順とともにわかりやすく解説!
ピープルアナリティクスは、国内外の人事領域で幅広く実施されており、採用、育成、配置、評価など様々なシーンにおいて活用が進んでいます。そうした中、各課題に対してどのような手法で分析を行うのかが重要になってきます。今回は、ピープルアナリティクスの分析手法の例を、手順を追って解説します。ぜひお役立てください。
目次[非表示]
- 1.ピープルアナリティクスとは?
- 1.1.ピープルアナリティクスのメリット
- 2.ピープルアナリティクスの分析アプローチの種類
- 2.1.記述的分析
- 2.2.診断的分析(要因分析)
- 2.3.予測的分析
- 2.4.処方的分析
- 3.ピープルアナリティクスの分析手法
- 3.1.クラスター分析
- 3.1.1.【採用活動における分析例】
- 3.2.ハイパフォーマー分析
- 3.2.1.【育成における分析例】
- 3.3.グループ集計・クロス集計
- 3.3.1.【配置における分析例】
- 3.3.2.【評価における分析例】
- 4.ピープルアナリティクスの手順
- 5.まとめ
ピープルアナリティクスとは?
ピープルアナリティクスとは、社内の人材に関するあらゆる情報を集め、それらをもとに分析した結果を活用する取り組みです。これまでの勘や経験に頼らない、客観的なデータに基づいて、採用、育成、配置、評価などの人事領域におけるさまざまな課題や目標に対する施策の実行や意思決定、経営判断などに役立てます。
ピープルアナリティクスのメリット
ピープルアナリティクスを実施するメリットとして、次のことが挙げられます。
・採用のミスマッチを防ぐ
従業員のデータを分析することで、求人者が入社後にミスマッチを起こさないか予測することで、早期退職を防ぐことにつながります。人材市場において競争が激化する中、長く働ける人材の確保に貢献します。
具体的な方法は「【採用活動における分析例】」をご覧ください。
・データに基づく育成プログラムの作成
蓄積された人材データをもとに育成プログラムを作成することで、各部署に必要な人材の育成に向けて最適化された教育プログラムを検討できます。またハイパフォーマーの人材データを分析することで、自社の業績に貢献度の高い人材の育成にむけた検討にも役立てることもできます。
具体的な方法は「【育成における分析例】」をご覧ください。
・スキルや能力による最適な人材配置
人材のスキルや能力データを統合的に分析し、各部署に求められるスキルや能力を把握することで、最適なスキルや能力を持った従業員の配置が可能となります。
具体的な方法は「【配置における分析例】」をご覧ください。
・データに基づく人事評価
従業員にとって敏感な人事評価について、データに基づく根拠のある仕組み作りが実現すれば客観性が生まれ、従業員にとって納得感のある公正な人事評価に近づきます。
具体的な方法は「【評価における分析例】」をご覧ください。
・戦略人事の実現
経営的な視点から人事戦略を立案・実行する「戦略人事」の実現を支援します。経営戦略と人事戦略を連動させることで、企業成長や組織改善につながると考えられています。戦略人事の推進には常に根拠ある意思決定が求められ、客観的なデータの分析・活用が欠かせません。ピープルアナリティクスは強い武器となります。
関連リンク|ピープルアナリティクスとは?~メリットや進め方を解説~
ピープルアナリティクスの分析アプローチの種類
ピープルアナリティクスの分析を行う前に、データアナリティクスを行うための分析アプローチの種類をご紹介します。人材データを分析すると一口にいっても、いくつかのアプローチ方法があります。今回は代表的な4つのアプローチ方法をご紹介します。
記述的分析
過去のデータを要約して可視化することで、状況把握する方法です。例えば、社内のハイパフォーマーの人材データを集めてみると、ある特性が共通して高いといったことがわかったとします。これは要約して可視化し、状況を把握する記述的分析といえるでしょう。
診断的分析(要因分析)
診断的分析は、「なぜそのような結果になったのか?」の要因を分析するアプローチです。記述的分析から分かった現状に対し、具体的な原因を究明します。
例えば、ハイパフォーマーの共通した特性がなぜ高いパフォーマンスを生み出すのかを分析します。
予測的分析
予測的分析は、将来的に起こりうるリスクを事前に察知するための手法です。例えば、離職者の傾向を分析し、似た傾向を持つ人材を洗い出し、離職の可能性を判定するなどです。高度な分析を必要とする場合もあり、近年ではAI(人工知能)を用いた分析も実施されています。
処方的分析
処方的分析は、記述的分析、診断的分析、予測的分析の分析結果から考えられる状況に対して、どのタイミングで、どのようなアプローチをすべきかを判断するものです。「今、どんなアクションをとるべきか?」を決めるのに役立ちます。
一般的な例として、レコメンド機能があります。AIなどが解析した結果をもとに、ユーザーにとって最適なモデルを提案します。人事領域で実現する場合は、過去の人材データの分析結果を統合し、最適な人材教育プログラムを提案したり、離職リスクが高まった段階でアラートを出したりといった仕組みが該当するでしょう。
ピープルアナリティクスの分析手法
ピープルアナリティクスを実践していく際には、さまざまな分析アプローチや分析手法の中から、目的や対象に合わせて、適切なものを選択する必要があります。
続いて、分析手法について見ていきます。採用、育成、配置、評価それぞれのケースに応じた分析手法の例をご紹介します。
クラスター分析
クラスター分析は、個々のデータから似ているデータ同士をグルーピングする分析手法です。メリットは、大量のデータを単純化して理解、考察しやすくなることです。
複数の似たデータを集約して一つのクラスターとして扱えるため、各クラスターの特性を分析するだけでデータのおおまかな特性を把握することができます。
【採用活動における分析例】
採用活動でクラスター分析を行う方法を見ていきましょう。
これからどのような人材を採用するかを考える際に、自社に不足しているスキルや経験を持った人材を把握し、その不足部分を持った人材を補いたいと考えたとします。
そのような場合には、以下のような分析を行います。
1.既存の人材の属性データとスキル、特性、評価について傾向を分析する
既存の人材データとして、性別、年齢、居住地、家族構成、経歴、保有資格、給与、業務時間、採用経路、適性検査の結果、職務経験、営業力(売上達成率・新規顧客獲得数など)、コミュニケーション力(プレゼン力、交渉力など)、マネジメント力(リーダーシップ、プロジェクト管理スキル、チームビルディングスキルなど)、人事評価などを洗い出し、傾向を抽出します。
そうすることで、コミュニケーション力に長けている人材が多い一方で、チームビルディングスキルに長けている人材が極端に少ないなど、自社の人材の特性を分析することができます。
2.組織の特徴を把握するためにクラスター分析を行い、人材をタイプ分けする
例えば、中途採用でチームビルディングスキルを持った人材を補いたい場合には、チームビルディングスキルに長けている既存人材をグルーピングし、一つのクラスターにします。そのクラスターにおいて、チームビルディングスキル以外の特性も抽出し、クラスターの傾向を把握します。
採用活動では、適性検査や面談の際に、このクラスターの傾向に該当する人材を積極的に採用するといった戦略を練ることができます。
このような手法を通して、自社に足りないスキルや能力を持った人材を補うために、採用活動で重視する項目を特定します。
ハイパフォーマー分析
ハイパフォーマー分析とは、優れたパフォーマンスを出している人材の特性を分析して定義することを指します。
【育成における分析例】
例えば、社内のハイパフォーマーを抽出し、その特性を伸ばす人材育成を他従業員に展開して、スキルの底上げをしたいと考えたとします。
そのような場合には、以下のような分析を行います。
1.ハイパフォーマーの人材データを収集する
まずハイパフォーマーの持つ属性、スキル、評価、入社時のデータ、研修受講データなどを集めます。
2.評価基準を定めてスコア化して定義する
価値観、知識・スキル、行動特性などを評価基準としてスコア化し、ハイパフォーマーを定義します。
例えば、価値観として「業務に対して明確な目的意識を持っている」、行動特性として「自主性が高い」などです。
ハイパフォーマーが定義できれば、ハイパフォーマーが持つスキルや特性を伸ばすような人材育成プログラムを作成し、全社展開することができます。
関連リンク|ハイパフォーマー分析とは?メリットと分析方法を徹底解説
グループ集計・クロス集計
グループ集計とは、グループに分けて量的変数を集計する方法です。合計値、平均値、中央値などを算出します。
クロス集計とは、2つ以上の変数を組み合わせて同時に集計する手法です。属性ごとの特徴の違いを知りたいときに利用します。例えば部門別、役職別などの分析軸をクロスさせて集計します。
【配置における分析例】
配置においてグループ集計とクロス集計を行う方法を見ていきましょう。
例えば、現在の人材配置における課題を探り、戦略を見直したいケースがあったとします。
そのような場合には、以下のような分析を行います。
1.部門・所属によって人材の分布の偏りがないか確認する
まずは現状把握を行います。グループ集計やクロス集計を用いて、部門・所属別に属性データ、スキル・能力、コンピテンシー(行動特性)評価、エンゲージメント、時間外労働時間、離職率、滞留年数などを集計し、比較分析します。明らかに他のグループと異なる結果が見つかれば、それを課題と定義します。
2.発見した課題に対して対策を講じる
分析結果から課題を発見できたら、その課題に対して何らかの対策を講じます。
例えばある部署で特にマネジメント力が高くリーダーシップを取れる人材が少ないことかわかれば、マネジメント力の高い人材が少ない部署へ配置換えするなどの対策を講じることができます。
これらの分析を行うことで人材配置の偏りを減らし、最適化することができます。
【評価における分析例】
評価において、グループ集計を行う方法を見ていきましょう。
例えば、人材データに基づく公平で客観的な能力評価を行いたいケースがあったとします。
そのような場合には、以下のような分析を行います。
1.グループごとに評価分布を比較分析する
グループ集計を行い、全社・職種・部門単位で評価分布を比較分析して、評価者の偏り、バイアスがないかを確認します。
2.偏り・バイアスを発見する
例えば、ある部門の上長が学歴の高い従業員への評価が高く、バイアスがかかっている可能性があるなど、評価に偏りがあることを発見したとします。そして、その偏りを解消するために、必要な施策を講じます。この場合は該当する上長に個別指導するなどが考えられます。
分析結果を受け、バイアスが入らないような仕組み・制度にするなど、対策を取ることで公平で客観的な能力評価につなげることができます。
ピープルアナリティクスの手順
ピープルアナリティクスを実践する際には、次のような手順で進めていくのがよいといわれています。ここでは人材配置を例に手順を解説します。
1.現状把握・目的の明確化
まずは分析の目的を明確にします。例えば現状把握、課題抽出を行ったところ「部門・所属によって人材の偏りが見られる」といった課題があったとします。この場合「偏りをなくし、適正配置を行う」といった目的を設定します。
2.データ収集
目的が明確になれば、どのようなデータが必要になるのかも明確になってきます。必要なデータを収集します。例えば、部門・所属別の人材の属性データや行動特性、スキルなどあらゆるデータが役立ちます。
3.分析手法の選択
集めたデータからどのようなことが知りたいのかを明確にし、分析手法を決めます。
4.データ分析
実際にデータを分析していきます。この作業は多くの場合、ピープルアナリティクスツールや分析機能のある人事システムの利用が効率的でしょう。
5.評価
分析結果の評価を行い、当初の目的である課題が見つかったかを評価します。例えば、人材配置に「偏り」は見つかったか、また、偏りがあったとすれば、どのような偏りがあるのかを確認します。
6.施策の立案
分析結果を受け課題が見つかったら、その課題を解決するための施策を考えます。例えば、特定の部門の一部の職種にハイパフォーマーが偏っている場合は、分散させるなどの施策を検討します。
7.施策の実行
6で立案した施策を実行します。
8.評価・改善のサイクルを回す
施策を実施した後は、必ず評価を行い、施策の目的が達成されたかを確認します。思うような成果が得られなかった場合は、施策を改善・実行し、評価を行うなど、目的の達成までこれらのサイクルを回していくことが重要となります。
まとめ
ピープルアナリティクスの分析手法や手順について解説しました。ピープルアナリティクスを成功させるポイントは数多くありますが、これらの施策を効率的に進めていくには人事データを活用することができるシステムの導入が有効です。
「LaKeel HR(ラキール・エイチアール)」は、ピープルアナリティクスを実施するのにおすすめの人事システムです。
統合型人事システムのため、LaKeel HRひとつで様々な人事業務に対応することができ、業務を行いながら人材データを収集・蓄積することができます。また、社内にあるシステムと柔軟に連携し、様々なデータを掛け合わせて分析を行うこともできます。
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