人口オーナスとは? 日本経済に与える影響と企業のとるべき対策を解説
生産年齢人口の割合が減少した状態を「人口オーナス」といい、経済成長を阻害するとされています。日本では1990年代から急激に少子高齢化が進み、生産年齢人口は1995年をピークに年々減少しています。
人口オーナスが進む中、企業がこのような局面を生き残っていくには、従業員の生産性向上や、労働力を確保するために職場環境への投資などが求められます。
この記事では、人口オーナスについての基礎知識や日本経済に与える影響、企業のとるべき対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.人口オーナスとは
- 2.人口ボーナスとは?
- 3.人口オーナスと2040年問題との関わり
- 3.1.問題①:経済成長が阻害される
- 3.2.問題②:就労環境の悪化
- 3.3.問題③:社会保障制度の維持が困難になる
- 4.人口オーナスを克服するために企業がとるべき対策
- 4.1.対策①:育児や介護と両立しやすい職場環境の整備
- 4.2.対策②:労働生産性の向上
- 4.3.対策③:多様な人材が働ける就業環境の整備
- 5.まとめ
人口オーナスとは
人口オーナスとは、生産年齢人口(15歳から64歳)の割合が従属人口(14歳以下と65歳以上の人口合計)の割合に対して相対的に少ない状態を指します。
人口オーナスになると、消費が活発な働き手が減ることで消費が落ちたり、1人あたりの社会保障費の負担が増加したりします。その結果、老年人口を支える社会保障制度の維持が困難になることから、人口オーナスは経済成長を阻害するとされているのです。
日本では、1990年頃から人口オーナス期に入っており、生産年齢人口は、1992年の69.8%を境に年々減少を続け、2020年には59.8%にまで減っています。そして2065年には、約51%にまで減る可能性があるという試算もでています。
これは、同様に人口オーナス期に入っているアメリカやイギリスなどの国よりも、生産年齢人口の減少が顕著であることを表しています。少子高齢化により生産年齢人口が増えずに従属人口が増え、今後ますます人口オーナスが進んでいくと予想されます。
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人口ボーナスとは?
人口ボーナスとは、生産年齢人口の割合が従属人口の割合に対して相対的に多い状態です。老年人口が少なく、労働力が豊富で1人あたりの社会保障費の負担が軽いことから、経済発展をしやすいとされています。
日本では、1950年から1990年までが人口ボーナス期だったとされており、国内の経済発展を遂げた理由のひとつといわれています。また、現在はインドやフィリピン、ナイジェリアなどが人口ボーナス期に入っているとされており、経済発展を今後も続ける可能性が高いです。
ただし、人口ボーナス期を経て人口オーナス期に移行した場合、再度人口ボーナス期に突入する事例がないため、人口オーナスに対応する施策が重要であるといえます。
人口オーナスと2040年問題との関わり
日本では、1950年代から1990年代にかけての人口ボーナス期に、飛躍的な経済成長を遂げました。しかしその後、少子高齢化が進んだことで1995年から人口オーナス期となりました。
2040年には、人口オーナスの影響を受けた「2040年問題」が発生するといわれています。2040年問題とは、2040年頃に老年人口の割合が最大化し、さらに生産年齢人口が急減することで、経済や社会維持が難しくなるとされる問題です。
2040年は、団塊の世代に次いで人口の多い団塊ジュニア世代(1971年から1974年生まれで就職氷河期世代とも呼ばれる)が65歳以上となり、高齢者の割合が急増するとされています。最新の厚生労働省の推計によれば、2045年の老齢人口は36%程度になると予想されています。
現在も人口オーナスが進んでいますが、将来的にはさらに深刻化する可能性が高いといえます。
問題①:経済成長が阻害される
人口オーナスでは生産年齢人口の減少が国内総生産(GDP)の減少につながり、経済成長に悪影響を及ぼします。
また、高齢者が増えることにより社会保障費の支出が急増するため、経済成長に対しての投資を行う経済的余力もなくなってしまうのです。さらに、社会保障費を負担する現役世代の税負担が増すため、消費が萎縮し、経済成長の妨げにつながる可能性があります。
問題②:就労環境の悪化
人口オーナス期は、労働者の就労環境を悪化させる可能性もはらんでいます。
生産年齢人口が少なくなれば、労働力が不足します。人口ボーナス期と同じような経営では、同じ業務量を限られた人数で対応することになり、1人あたりの業務負荷が増えます。これにより、長時間労働が増えたり、ワークライフバランスを崩したりする要因となってしまうのです。
こうした弊害により、仕事と育児・介護との両立が難しくなるほか、その両立が難しいことから退職せざるを得なくなり、労働力がさらに減少することにもつながりかねません。また、子育てがしにくい環境は、少子高齢化を後押しする要因にもなり得ます。
問題③:社会保障制度の維持が困難になる
人口オーナス期は、社会保障費を負担する人よりも給付を受ける人が多くなるため、社会保障制度の維持が困難になります。
日本の年金制度では、賦課方式を採用しています。財源を現役世代に依存しているため、さらなる負担増加を強いられることになるでしょう。人口ボーナスが始まったとされる1950年代には、老年人口を生産年齢人口で支える割合は、1人に対して約12.1人でしたが、2020年には1人に対して2.1人となっており、負担が大幅に増えていることがわかります。
さらに2065年には、1人を1.3人で支える割合になる試算もでており、生産年齢人口のさらなる負担増が見込まれているのです。
参考資料:「令和4年版高齢社会白書」第1章 高齢化の状況(第1節 1)、図1-1-2 高齢化の推移と将来推計
人口オーナスを克服するために企業がとるべき対策
人口オーナス期にある日本で企業が生き残るためには、育児・介護離職を減らすことや生産性の向上、女性・高齢者・外国人といった多様な人材の雇用を促進することが大切です。
ここからは、それぞれの対策について詳しく確認していきましょう。
対策①:育児や介護と両立しやすい職場環境の整備
生産年齢人口がより多く経済参加するために、労働参加率を高められる職場環境の整備は重要です。そのため企業には、育児や介護と両立しながら働ける環境を整えることが求められます。
昨今の現状では、育児や介護との両立が難しいことを理由に、やむを得ず退職してしまう労働者は少なくありません。人口オーナス期では、こうした労働力を確保することが必要です。
具体的な施策としては、育児・介護休暇制度の整備や、これらの制度に対する社内周知、フレックスタイム制の導入などが考えられます。
対策②:労働生産性の向上
人口オーナス期においては、労働力の減少を補うため、労働生産性の向上によって経済成長を維持することが必要です。
生産性を高める施策としては、DX化の推進や業務プロセスの効率化、ノンコア業務のアウトソーシング、業務の自動化(機械化)、教育による人的資本の強化などが考えられます。さらに、こうした手段を活用して短時間で成果を上げることは、人件費を抑えることにも有用です。
また、効率よく業務をこなすためには、従業員の健康維持も重要です。健康経営は、従業員のモチベーションや生産性の向上などによって組織を活性化させ、業績向上につながります。身体面だけではなく、メンタルケアも積極的に行い、従業員の生産性が向上しやすい環境を整えましょう。
対策③:多様な人材が働ける就業環境の整備
人口オーナス期の日本で企業が成長していくためには、女性や高齢者、外国人といったさまざまな人材の雇用を促進し、その人たちが働きやすい労働環境を整備することが重要です。
そのためには、フレックスタイム制やリモートワーク、時短勤務といった多様な働き方を可能にする制度を整えることが必要となります。働きやすい環境が構築できれば、採用による人材確保がしやすくなるほか、従業員エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
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まとめ
日本は現在、人口オーナス期にあります。かつては人口ボーナスを経験してきましたが、人口ボーナスは永続するものではなく、さらに一度人口オーナス期へ突入すると再び人口ボーナス期に戻る可能性は低いです。したがって、企業は人口オーナス期に適応し、限られた労働力を最大限に生かしながら、従業員の生産性を高めていく必要があります。
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